WOWWOWにてこれまでの全ジェームズ・ボンド映画の連続放映があった。

子供の頃からのめり込んだ作品が全てオンエアされる滅多に無い機会、一気に録画して年代順に全部見てしまった。

同居している息子と2人で1日1作品をあっという間に。

第1作目の「ドクター・ノオ」が1962年公開だから、もう50年をこえるという息の長いシリーズで、全25作品。

言わずと知れた「007」(ゼロゼロセブンではなく “ダブルオーセブン” !)、英国秘密諜報部MI-6 のエージェント。

殺しのライセンスを持つ。タキシードの下に銃を忍ばせ、任務の合間(または任務の一環として)にマティーニを片手にして女性を口説く、無類の女好き。

英国紳士というと、女性に優しいイメージがあるのだけれどもボンドは違う…全く違う。

目ざとく見つけたイイ女は必ず口説く。

それも押して引いての男女の駆け引きなどなく、「押して、押して、押しまくる」!

頰を叩かれようが、相手の唇を強引に奪って黙らせる。

今日のようにセクハラと言われるのを気にしてそっと、そっと女性にアクセスするなぞ皆無。

子供の頃、ショーン・コネリーが扮した初代ボンドが次々と女性を口説き落とすシーンを僕はテレビ放映で見ていた。

大人の世界ってスゴイなあ、世の中の大人達って毎日こんなにも激しくドラマティックなのか…とやけにドキドキしまくっていた。

自分も大人になったら同じようにカッコ良く女性を口説いて “落とす” のかな、などとませたガキは妄想していた。

イケイケのボンドだが、だれかれ口説くわけでなく、既婚(つまり人妻)、年齢は30代というポリシー(?)がある。また、相手に気が無いとみると決して深追いしない。

ボンドは言葉を武器に女を口説くが、極めて口数は少ない。裏を返せば一言一言が直球でハートをズドンと狙ってくる。

世に「草食男子」という言葉が浸透してもう長い。日本にはこんな言葉があるんだ、と英国人に話した事がある。彼らはボンドとはかけ離れたキャラの僕の会社の同僚、いつもジョークばかり言うどちらかといえばミスター・ビーンに近い印象のある2人だ。

「ケニー、そんなのイギリスじゃ、あり得ない。女性から言われるのを待っているなんて、信じられないよ」

「俺も同感だね。昔と違って景気が悪くて若い世代にお金がなく、車にも興味なく、旅行もあまりしないのはイギリスも日本も同じさ。でも、恋愛まで興味無くしてるのは…」

「自信がないのさ、多分ね」

「確かに経済的にきついと色々な事に自信を失うのはよく分かるよ。

イギリスだってずいぶんと小さくなった。大英帝国の栄光って威張ってた時代はもう来ないさ…。 でも、だからといって自分の将来への自信を無くしていては未来は暗いよね。

日本の若者がどうしてここまで自信を無くすのか不思議だよ」

ボンドのみなぎる自信には

成る程…自信か。

「婚活」という言葉があちこちに踊り、出会いばかりか恋愛の進行状況まで逐一アドバイスするなどは、自分で異性との関係性を築く自信がない人が多い事の裏返しではある。

翻ってボンドはどうか。

みなぎる自信がハンパじゃない。慎重にはなっても歩みを止めることはない。迷いがない証拠だ。

イギリスには『自信は能力を二倍にする』という諺がある。

考えるに、ボンドがそこまで自信を持てるのは、やはり自分は「認められている」というバックがあるからではないだろうか。

つまり自己承認要求が満たされているからこそ、あそこまで強気でガンガンと何に対しても押しまくれるのだ。

プライベートでは孤独なボンドにとって彼をそこまで認めてくれている存在は間違いなく上司のMだろう。

開発したばかりの新兵器は次々と壊してしまう。時には政府のお偉方の命令を無視して突っ走ってしまうボンド。Mはそれでもボンドへの信頼を貫く。信じているのだ、彼を。

ボンドはMからの信頼を背中にいつも感じているからこそ、任務にも女性にもあれだけの自信で向かっていけるのだろう。

Mの存在は、ボンドにとって父親であり、母親でもある(シリーズ通してM役は名優バーナード・リーとバトンを受け取ったベテラン女優ジュディ・デンチが好演している)。

子供がどんなやんちゃでも、本人をとことん信じる事を貫き通す。

案外、「草食男子」が増えているという日本の社会の根っこには、誰にでもある『親と子の信頼関係』の欠如という問題があるのかもしれない。

そうだ、これは若い世代の問題というよりも、親世代が子供を心から信じきる事が出来ないがために子供の自信が失われていった結果では?

それは親が子供に期待し過ぎて、ハードルを上げる事でそれを超えられない自分の子供への不満そのものだ。そしてルールさえも時には親が決めてしまう。

『お前をどこまでも信じきるよ』

最後のボンド映画「007/スペクター」を一緒に見た後にもう携帯でゲームに興ずる息子。その顔を見ながら心のイライラをぐっと抑える…

(おいおい、勉強はどうした? テレビの後にさらにゲームなんて目が悪くなるぞ。そんな事よりたまには可愛い女の子の一人でも家に連れて来たらどうなんだ? ボンドガールを見てもなぁーんにも感じないのか? 引きこもりになんてならないよな)

ケニー、心配しすぎなのは相手を信じていない証拠だ。いかん、いかんぞ。

まずは自分が「親」としての自信を持たないと。でないと子供を信じる事は出来ないじゃないか。

「おい、 どうせ “草食(そうしょく)男子” なら、 “早食男子” の方が、いいぞ。ボンドみたいに」

「…え、それ何のこと、ヤジ?」

あ、いやいや (汗)…

ボンドを見習うのはやはり、ほどほどにしたほうがイイかな? 息子よ。

▶︎ ボンドの実践をチラ見はこちら『草食男子は口説き方を007に学べ。。ジェームズ・ボンドの自信の裏側にあるもの – 実践編』