ハワイで登山、その魅力③マウナロア山頂の巨大火口・モクアウェオウェオを見る 38年ぶりに噴火した山へ挑んだ記録

アメリカのシェラネバダ山脈がすっぽりと入ってしまうほど大きいマウナロア。世界一大きな山の山頂には巨大な火口クレーターがあり、名前は『モクアウェオウェオ』。

これを見るには、自分の足で歩くしかない。

『ハワイで登山、その魅力①マウナロア -世界一大きな山』

ハワイで登山、その魅力② マウナロア山頂をめざす 38年ぶりに噴火した山へ挑んだ記録

往復8-10時間の長丁場。登山開始から約4時間、ようやく山頂の巨大な火口壁が見えてきました。

大きい… とにかく大きい。あまりにも大きすぎて距離感がつかめないが、まだ2時間は歩かないとたどり着けそうもない(この辺り、山をやっていると何となく分かってきます)。

ルートは歩きやすいパホエポエ溶岩と、ゴツゴツで歩きづらいアア溶岩の上を繰り替えして、まだまだ続く。

時折、パホエポエ溶岩にはこのように大きな裂け目が口を開けています。

しばらくして、最後の分岐に出る。

どんなに頑張ってもジープで登ってくるのはここまでが限界(実際にここまで車を乗り入れてくるのは国立公園のレンジャーか、気象観測員だけ)。

この分岐は重要なポイント。

大きなケルンが見えているが、天候急変時など万一の場合には、雨や雷を避けられそうな、1-2人分の小さなスペースが岩の下にあります。分岐でマウナロア・キャビン方面と山頂へのサミット・トレイル、および旧気象観測装置のあるノースピット・トレイルが分かれます。クレータのへりに沿ってサミット・トレイルを歩く事にするが、ここから山頂までが実は意外と長い(結局2時間を要した)

前方には、大きな火口壁が見えているが、しばらく歩くと眼下に別の火口クレーターらしき溶岩台地が見えてきました。遥か遠くに長い火口壁が望まれ、この火口はモクアウェオウェオではない事にすぐ気がつき、ガックリ。

山頂部はご覧のように広大で、ガスに巻かれたら場所を特定するのがかなり困難になります。また、トレイルが交錯しているので、分岐から進む方向を見定める事。

行きはカルデラのへりをたどればいいのですが、問題は帰り道。カルデラのへりを外れ、この小さな別のカルデラを横切って、標識のある分岐のある方向を感覚で覚えておかないと、迷いそう。

まして、帰りは下りなので、景色の中に道標が溶け込んでしまって見づらくなります。

小さな火口を横切ると、再びルートは歩きずらいガラガラのアア溶岩の上を歩きます。

このころから、心なしか、息切れが。それもそのはず、すでに富士山より高い場所を延々と歩いているわけだから。
ノースピット・トレイルの終点である旧気象観測所が右下に見えたので、確認しに降りてみます。火口のへりを行くサミット・トレイルへの道はついていないが、どこでも歩けます。
そして、待ちに待った大カルデラ、モクアウェオウェオが目に飛び込んできました。

こ、これは…すごいっ!長さ4.8Km、幅2.4Km、そして高さは183m もあるモクアウェオウェオの大カルデラ。

対岸の火口壁の遠い事!

そして、カルデラの底は青い粘土のような色をしています。

モクアウェオウェオ(Mokuaweoweo)とは、ハワイ語で『赤い魚』の意味だというそうですが、現地の人は火口で赤く燃え盛る溶岩を目にしたのでしょうか。

この大きな火口が溶岩をたたえた姿を想像すると、美しくもあり恐ろしくもあります。

1940年頃のスコリア丘(火山活動で出来た、茶碗を伏せたような形をした小さな丘)が火口の中ほどに望めます。

カルデラの底まで下りてみたい気がしますが、どこにも道はなく、断崖が延々と続いている。

このカルデラを一周するトレイルはなく、一周出来たとしてもまる一日はかかるでしょう。ケタ外れのデカいスケールには圧倒されました。

来た道の方を振り返ると、あれだけ大きく見えていたマウナ・ケアの山容もすっかりモクアウェオウェオの巨大火口の背後に隠れそうなくらいに小さい。

そして、待望の山頂、標高4,169mに到達。

ここがマウナ・ロアの最高点。時間は12時20分。

朝6時半に気象観測所から歩き始めて6時間近くかかって標高差800mを登り、山頂へ到達したことになります。

山頂標識も何もなくて味気ないのですが、海外の山のピークはえてしてこんな感じである事が多い。

セルフィーを撮影するのも一苦労でした。

なにせ、たった一人で登ってきて、予想通りですが山頂には自分以外に誰もいない。

気象観測所の駐車場にはもう1台車が停めてあったので、先行する登山者がいるのか、と思っていましたが、一度たりと人影を見る事はありませんでした。

気象観測員なら、わざわざ山頂まで来ず、ノース・ピットトレイルを歩いてもう下山にかかっているのかもしれない。

幸いにも天気は申し分なく、足元に広がった雲海を見ると、午後の夕立もなさそうなほどに安定しています。

行きに登ってきた道とはいえ、下りは道を間違えないようにより気を使う。

記憶をたどり、目を皿のようにして周囲を見て、ケルンをたどること、4時間。

気象観測所が右下に見えてきました。

もう安心。

駐車場にたどりついたのは夕方4時15分。

往復10時間をかけて日帰り登山したマウナ・ロア。

余韻に浸る間もなく、再び溶岩の中のオブザーバトリーロードの悪路を慎重に車を走らせていました。

と、目の前に迫ってきた島の東・ヒロ側から押し寄せる雲海。

中に入るといきなり大粒の雨が車の窓にたたきつけてきました。

あれだけ快晴を満喫した1日、雲海の下は雨まじりの日であったようです。

ここでも、ハワイの火の女神・ペレが味方をしてくれたのでしょうか。

カイルア・コナのホテルに戻ったのは夕方8時をまわっていました。

数時間、睡眠をとっただけで、夜中の1時発、もう一つの4,000m峰、マウナ・ケアへの天体観測と御来光を見るツアーへ。

マウナ・ケアの紹介はまたの機会に。