ムートンのエチケット

世界でもっとも偉大なクラレットの1つ、誰もが知るシャトー・ムートン・ロートシルト。フィリップ・ド・ロッチルド男爵は、年ごとのワインラベルのデザインを、その時々の著名な芸術家に依頼するという案を思い付きました。1946年以降シャトー・ムートン・ロートシルトのラベルは世界中の著名なアーティスト達によりデザインされています。

『ワイン展 -ぶどうから生まれた奇跡-』

(国立科学博物館 2015.12.13)

●第1級たり得ず、第2級を肯んぜず、そはムートンなり ( Premier ne puis, second ne daigne, Mouton suis. )

●今第1級なり、過去第2級なりき、されどムートンは不変なり。 (Premier je suis, Second je fus, Mouton ne change.)

1973年は、ムートンにとっては1855年の格付けから100年以上も二級とされていたメドックの格付けが4世代にわたる努力の末、一級 (グランクリュ) に昇格した記念すべき年。巨匠パブロ・ピカソがエチケットの絵を描きました。そして彼はこの年に世を去り、奇しくも遺作の一つとなったのでした。

ラベルのデザイン料は、お金でなくワインで支払われたとか。ピカソの描いたラベルの評判が高ければ高いほど、ワインの価値は高まり高値がつく。ピカソがそのワインをもらえば、自分で飲むにしろ売るにしろ、価値が高いほうがいいに決まっている。双方に利益のある話である…お金の達人は、究極的には、お金を使う必要がないという、納得する話。

ストリートアートの先駆者、ユニクロのTシャツでもおなじみのアメリカ人画家、キース・ヘリングが描いた1988年ラベル。


ベルギーの女性シュールレアリズム画家、ポール・デルヴォーによる1985年ラベル。

デルヴォーが誰かというと、こんな絵が思い浮かびます。

『こだま』ポール・デルヴォー 1943年

1991年のラベルは日本の出田節子(クロソウスキー・ド・ローラ・セツコ)さんが手がけました。1979年の堂本尚朗さんにつぐ日本人としては二人目です。