言葉遊び – 日本語と英語と中国語と。

10日という長い休みのゴールデンウィークが明けて、仕事に戻ってすぐのこと。

休み明けのあいさつを交わし、メールを同僚のドイツ人に送る。

彼は日本に住んで長いのですが、そのメールを開封した後、すぐに電話をかけてきました。

「イミ、ワカリマセン。何送った? コレ、ドンナ意味デスカ?」

同じ文字なのに…

…ちょっとした確認をしたくてわざと送った日本語の文章がこれ。

『5月1日は日曜日で祝日、晴れの日で、その後3日間ずっといいお天気だったよね』

小学生でも書ける文です。

実はこれ、外国人には超難関な文章。読むのも書くのも最高レベル難度。

それを確認したくて、彼には申し訳なかったのですが、何気に書いて送ったのでした。

何を知りたかったのかといえば…

それは、使われてる単語をひらがなで書いてみればすぐに分かります。

ついたち
にちようび
しゅくじつ
はれの
みっかん

そう、「日」という漢字。

同じ字なのに、どれも発音が違います…

『イジメないでください。ニホンゴ、どうしてこんなに難しい?』

関西に住んでいたからちょっとした関西弁も話せる彼にとっても、なかなかに日本語はトリッキーなようでした。

違う読み方をする漢字がどんなに彼にとってハードルが高いのかを知りたかったからです。

予想通りのボヤキが返ってきたのでした。

逆もまた、困ったことに…

逆に同じ発音なのに単語が違う例はもっと大変です。

ちょっと調べるだけで、相当な数がある事が分かります。

●こじん …個人・故人・古人

●じてん …辞典・時点・次点・自転・事典・自店

●こうこう …高校・航行・後攻・口腔・高工・後項

読めば漢字で表されているので、日本人には簡単に意味がわかります。

ですが、耳で聞いただけでは、たとえ日本語を学ぶ外国人であっても判別するのは至難の技でしょう。

一度頭に記憶しても、生活の中で実際に使い慣れないと身に付かない。

その意味では、日本語は他の言語に比べても格段に経験がものを言う言語では。

言葉は面白い

昔どこかで教えてもらった漢字遊びのひとつです。

『子子子子子子子子子子子子』

「子」の文字が12個連なっていて、どう読むのかさっぱり分からなかった。

「猫の子仔猫、獅子の子仔獅子」

(ねこのここねこ ししのここじし)

ですね。

これを口にしたのは嵯峨天皇といいますから、平安の昔から天皇からして日本語の複雑さを逆手にとって(仕えていた参議篁に)難題をふっかけている。

英語でもその手の遊び言葉は探すことが出来て、

Although you can can anything I can can, I can’t can a can you can can, can you ?

(私は、あなたが缶詰にできる缶を、缶詰にすることは出来ません。でも、あなたは、私が缶詰めにできる缶を缶詰にすることが出来るんじゃないかな?)

名詞も動詞も同じ can なのがミソ。「缶」「缶詰めにする」。発音も同じですからね。区別するのは文脈か、冠詞が付くかどうかみるしかないです。

もう一つ、英語で。

When a doctor doctors another doctor, does he doctor the doctored doctor the way the doctored doctor wants to be doctored, or does he doctor the doctored doctor the way the doctoring doctor wants to doctor the doctor ?

これも最初の文と同じ名詞も動詞も同じ。doctor は名詞で「医者」、動詞として「診察する」の意味で使われます。

(医者がほかの医者を診察するとき、その医者は彼自身が望んでいる方法で医者を診察するのだろうか、あるいは診察される方の医者が望む方法でその医者を診察するのだろうか?)

名詞がいとも簡単に動詞になるから、英語はややこしい。

(なんとこれは2001年に防衛大学校の入試問題として出題され、「何人の医者が登場するのか」を問う設問でした。答えは…もうわかりますよね)

こんなややこしい会話、英語圏でホントにしてるんですかね?

中国語になると、少し前ですが、HKTの指原莉乃の面白い話が記事になっていた。

中国でイベントに出た際、中国スタッフから、「ウォーシーホワンニー(あなたが好き)」と言うとファンが喜びますよ、とアドバイスされた彼女。

会場でその言葉を叫ぶと、会場がザワザワと…

何かおかしな反応が会場に溢れた。

どうやら彼女の発言は微妙な発音の違いで、現地ファンたちにはこう聞こえたらしい。

私、妊娠しましたあ(我怀孕了)!』

そりゃ、みんなビックリするわね。

彼女は人気があって、お騒がせキャラだけにたいそう他のメンバーからこのことでイジられたとか。

この話のように中国語は発音がとても難しい。

じゃあ日本語と同じ漢字を使うから書けば何とか意味が通じるだろう、と侮ってもいけない。

昔、出張に出向いた時の事。北京で最後の夜に取引先の方と食事の最中。

帰国直前、日本の家族や友人に手紙を送ろうと思った。

インターネットの広まる前の時代です。よき旅先での体験を伝えるのにはまだ郵便が主な手段でした。

ところが、書くべき紙がない。

筆談で何とか通じるだろう、とエアメールを出したいとの気持ちで、食卓の上にあった箸を入れてあった小さな紙に『手紙』とペンで書いた。

(何か書く紙はないかな?)

身振りで書き物をするところを伝えようとしました。

すると、目の前の中国人がニッコリ笑って席を立った。

しばらくして彼は持ち帰ってきたものを嬉しそうに僕に渡してくれた。

それは… な、なんとトイレットペーパー

た、たしかに『手を拭く紙』ではあったか。

(タ、タオル使ってよ)

おかげで、大きなロールのトレペを受け取り、それで手や口を拭くハメになった。

(せっかくの親切だからなぁ)

未だに中国語は上達しません! (というか、 勉強もしてないんですが)

学びは続く…

若かりし時、『 日本語と英語と中国語が出来れば、世界中の(女性と)恋が出来るぞっ』と言われて、その気になった事がありました。

(写真の車は私のものではありません。その気になった時にあればもちろん有効に使ったのでしょうが)

それは昔の事。でも言葉を学び、駆使してきた事が今の自分の大きな部分を占めています(中国語はチト占める割合が少ないですが)。

言葉は楽しい。言葉を交わしている時はもっと楽しい、それがモチベーションとなっています。