日本最南端の寿司屋 西表島『初枝』で味わう絶品島魚

世界自然遺産にも新規登録された大自然のワンダーランド・西表島唯一のお寿司屋さん

西表島! 名前を聞くだけでワクワク、ゾクゾクする人は間違いなく冒険心に溢れる自然派の人でしょう。

2021年7月に正式にUNISCOの世界自然遺産に正式登録される『奄美諸島、徳之島、沖縄島北部および西表島』の構成要素4か所の一つ。面積は琵琶湖の半分ほどで、人口は限られた場所におよそ2,400人、人口密度はわずか7.7人/㎢。日本からの自然遺産登録はおそらくこれで最後になるとも言われています。

島の面積の90%が亜熱帯の樹林におおわれた掛値なしの大自然。日本でこれだけ濃い原始の風景が残っているのはもはや知床・日高山脈と西表島だけ。

そんな島にある本格的お寿司屋さんが『初枝』。

西表島の主な玄関は北の上原港と南の大原港。『初枝』は上原港から車で15分ほどの所にあります。

少なくとも与那国島と波照間島には寿司屋がないのは知っているのですが、本当に『日本最南端のお寿司屋さん』なのかどうかは…正直分かりません。

そんなタイトルよりも何よりこのお店が素晴らしいのは、八重山ならではの島の魚の味を存分に堪能できること。

おすすめはもちろん『島魚にぎり盛り合わせ』10貫。

大将のオススメの食べ方にしたがって皿に並べられたネタを左上から右に順に食していきましょう。

まずは『ホンマグロ』。ご存じのように沖縄のホンマグロの旬は産卵時期の5-6月。四方が海に囲まれた八重山ではいつでも口に入れられるのがうれしい。

 

続いて、『マジク』。これはメニュー表には ( ) 付でレンコダイと書いてありました。

本土で食べたレンコダイの寿司とはちょっと味が違い、旨味がもっと出ている気がしました。

 

赤身のカツオに続いては、塩レモンが絶妙だった『アカマチ』。この魚、実は伊豆半島ではマダイに代わるほどの高級魚で知られるハマダイの事。ここ沖縄でもマジク、アカジンミーバイと並んで『沖縄三大高級魚』の一つに数えられよく食されている魚。

口に入れると長いことシャリとあった絶妙の旨味がじんわりと広がる感覚があります。

白身が多い沖縄の島魚、トロなど脂が乗り切った赤身や光物が少ないのは仕方ないのですが、それを補って余りある八重山の白身の島魚レンチャン攻撃はなかなかパンチあります。

 

この後の白身ネタは『ミーバイ』。ミーバイとはハタ類の事。飴色した切り身がなんとも艶があって色っぽい。

 

続いては『マキエビ』。そう、見ればすぐ分かる、クルマエビですね。出世魚のごとくこのエビはサイマキエビ→マキエビ→クルマエビと大きくなるにしたがい名前が変わり、10cmほどの大きさのマキエビが一番甘みが出て寿司に向いているのだそうです。

 

そして今回の旅で改めて実感したのが、西表島の『セーイカ』の旨さ。初日から刺身を食したのですが、毎日食べても飽きない。ねっとりとしたイカの触感、硬すぎも柔らかすぎもない絶妙の歯ごたえ。生きたものは1メートルにもなる食用では世界最大級の大きなイカで、最近は回転すしの『くら寿司』でも季節限定メニューになっているのを見たことがあります。

沖縄のイカスミ汁もこのイカだという事を今回初めて知りました。刺身もイカスミ汁もいいですが、やっぱり酢飯と一緒に食べるのが一番。

そして『シャコガイ』の登場。

見ただけで磯のかおりがしてくるようで、視覚から攻めて来る感がたまらない。

そして食感はやっぱりコリコリ。沖縄が誇る寿司ネタは何かと問われたら僕は間違いなくシャコガイを上げる。これでオリオンビールがあればなあ… (残念ながらこの時、沖縄県は緊急事態宣言中で酒類の提供はありませんでした)

 

最後に玉子巻きをいただいて終わりです。ああ、満足…

ですがはるばるやってきた日本の涯(はて)・西表島。せっかくだから、もう少しだけ島の味を楽しみたい。

そこで、追加でオーダーしたのはヒラマチオオタニワタリ。

『ヒラマチ』ハチジョウアカムツのこと。ヒーランマチ、と呼ぶのがより正しい発音のようです。

ところで、アカムツといえば、北陸でノドグロのことですが… これもノドグロと同じ魚?

見た目は確かに似ています。味もノドグロのように脂がのっており舌の上でとろけるような味わいでしたが、ノドグロよりは少しあっさり気味です。

このヒラマチですが、ノドグロとは全く違う外観で目が大きなハマダイ属の魚。『ムツ』とは脂っこい、という意味で、特定の魚の種や属を表しているわけではありませんから、全く別の魚でした。

続いていただいたのは『オオタニワタリ』。こちらは巻物。

オオタニワタリと聞いて、語感から「カニかエビの一種?」と思う人もいるでしょうが、これはワラビやゼンマイと同じシダ植物。伊豆半島、紀伊半島や九州南部にも分布しており、本土では絶滅危惧種指定を受けている希少種。ところが沖縄では古くからひろく食べられている島野菜で、「沖縄唯一の山菜」、しかも年中食べられるポピュラーな食材。

見た目と違って苦みやくさみは全くなく少しコリコリして美味しい。酢飯ととても合う味です。

ここまでいただいて、もうお腹はいっぱい。お酒が飲めなくても大満足でした。

予約を入れた時間は夕方6時。食事を終えてお会計していただいた時間でも、まだ7時半前。夏のこの時期なら日没前にお店を出て近くで海に沈む夕陽を見に行ける時間です。

『初枝』の営業時間は17時から22時半まで。お酒の種類も豊富。カウンター席、テーブル席に加え座敷席もあり結構な人が来て夏はほとんど満席の日が続く人気店。

オーナー兼板前の大将は若いですがキリリと男前、寿司を握る姿がかっこいい。女将さんと2人だけでお店を切り盛りしているようなので、とても忙しいでしょうね。

これほど人気なので、事前に予約を入れておくほうが間違いないでしょう。西表島のような離島では、旅の予定が決まったらまず予約を入れたほうがいいでしょう。私たちが食事中にも何組かの方が来て女将さんが満席のためにお断りをしていました。

今回はお寿司だけをいただきましたが、石垣牛の握り、パパイヤキムチ、そして絶品だと聞く噂のマース煮など、他のメニューも豊富。ぜひ次の機会に食べてみたいものばかりです。

お寿司の後に味わう『日本一』の星空

最後に…。「初枝」では宿との送迎サービスはありません。タクシーを使おうにも、上原では夕方5時が営業最終時間になるのでご注意を。やまねこタクシーさんなど、日時によっては相談出来るかもしれませんので確認ください。

いっそのこと、宇奈利崎近くに宿をとるのはおすすめです。徒歩で『初枝』にも行ける距離ですし、周りには上原港周辺よりも飲食店が多いです。

そしてなんといっても食事の後の帰り道に少し足を伸ばせば、八重山の素晴らしい星空が見えます。国際ダークスカイ協会(IDA)が認定した日本で唯一、アジアでも2つしかない「星空保護区」認定を受けた八重山の夜空。イリオモテヤマネコなどに配慮して街灯があまりない島なのでライト持参で。

この日は幸運なことに新月。頭上には素晴らしい星空が広がりました。

美味しいお寿司をいただいた後、八重山の澄んだ星空は格別の美しさです。天の川を見ながら歩く至福の時間をぜひ楽しんでみてはどうでしょう。

美味しいお寿司に加え、島の旅情あふれるロケーションと星空がさらにその魅力を増してくれたようで、旅のシーンに忘れられない1ページが加わりました。

『島魚料理 寿し 初枝』

– クレジットカード可(VISAのみ)

-定員約30名

-駐車場有り(5-6台ほど)

-☎ 0980 (85) 6023

-定休日 火曜日

-営業時間 午後5-10時30分(L/O 9時30分)

-冬期(1-2月)は休業(要確認)

-FACEBOOK :  https://ja-jp.facebook.com/profile.php?id=100057598233432

(2021.7.5訪問)