★創通エージェンシー、日本サンライズ 『機動戦士ガンダム』

『「伝え方が9割」って … 何で「伝え方が全て!」じゃないの?』

最初に書店に積まれているこの本を手に取った時に正直に思った事を言葉にするとこうなります。9割って、10割でも100パーセントでもないから確かに ” 全て “ ではありません。でも、8割って書かれると逆に残りの2割が何か気になってしまい本に対して余計な疑問が出て来てしまう。9割って… うーん、妙に納得。

で、話はいきなり宇宙世紀0079年にトリップします。

シャアのザク、通常の3倍のスピードで接近中!

『高熱源体が急速にホワイトベースに接近中!』

『ザクか?』

『ブライトさん、でも通常の3倍ですよっ!』

ご存知、機動戦士ガンダムのシャア操る「赤い彗星」ザクが初登場するシーンです。

通常の3倍…うーん、すごいっ! 速すぎる!何者だ、シャアって。この先どうなるんだ?

誰もがガンダムやホワイトベースが迫り来るシャアという敵にどう立ち向かうのか、ワクワクドキドキで次の展開に心踊ったはずですよね。

でも、3倍… です。シャアが凄いのであれば、ガンダムの脚本を書いた富野由悠季さんはどうして他の数字を使わなかったのか。

『通常の10倍のスピードで接近中!』

『ホワイトベースに向かってザクの100倍のスピードで接近する物体有りっ!』

どちらも、なんだかしっくりこないなぁ。

10倍で飛んでこられたら、ぶつかってしまうがな。これじゃあミサイルと同じでモビルスーツ同士の戦闘シーンにならない。

100倍ってなると、もうスターウォーズの世界でいうハイパードライブで亜光速空間に突入のレベル… ってことは戦うどころか速すぎてホワイトベースを通過〜、すかさずチャンスと見たブライト艦長の命令による後ろからの地球連邦軍の一斉射撃を受け、シャアはララァとも会う事なく一瞬で『宇宙(そら)』に散る。エースを失ったジオンは劣勢に転じ速攻で連邦に降伏、アムロはニュータイプに覚醒する事もなく幼馴染みのフラウ・ボゥと結婚して子供を作り平和に暮らしましたとさ… チャンチャン !

脱線しましたが、ここではストーリー上誰もが納得し、受け入れやすい数字が『3倍』だった訳です。いまやシャアザクの『通常の3倍』は世の中で色々なところで引用され、驚くスピードについてのリアルで実感を伴った最適表現としてデファクトスタンダードになっている程です。

「9割」には意味がある

話を本に戻します。もうお分かりいただけたと思いますが、『伝え方が9割』のタイトルは著者の佐々木圭一さんが意図的に決めたものです。当然、9割というこの数字にも込められたメッセージがあります。冒頭で書いたように、僕はこの本の題名を見て興味を持ち、実際に購入しました。そう、9という数字が最もこの本を手に取らせるのに効果のある数字だと佐々木さんは考えたはずです。

先のガンダムのシャアザクのスピードもそうですが、何かを人に伝える時に使う言葉は選ばなければいけません。自分が今までに見たり、読んだり、聞いたり、話したりした言葉を組み合わせている事がほとんどだと思います。自分で新しい言葉を発信したと思っていても、実は過去に体験した言葉をベースにして味付けを少し変えたものがほとんど。私は『言葉力』は経験からしか育たないのでは?と考えています。

人へ自分の言葉を伝える事は無限の可能性を示します。自分の想いを実現する為に他の人と言葉を交わし、伝え、説得し、交渉し、納得し、そして自分と人が動く。このプロセスは普遍的なもの。言葉は人を動かす最大の動力源。

著者の佐々木さんは、そのために大切な事は、『力強い言葉』を使う事だと述べます。そして、まず著者がその本のタイトルそのものをよい例としている点がユニーク。

この本には『力強い言葉』を生み出す方法論とヒントが散りばめられていますが、佐々木さんは、それをたった5つに大別されています。ですから、読んでいる最中に迷子になる事も無く、シンプルに内容が頭に入ってくる分かりやすさ抜群の構成です。

『力強い言葉』が要る理由はコレだ。

実はこの本、ケニーがここ何年かで読んだ本の中で一番読み返した回数が最も多い本の1つです。初版が2013年なので、世に出てからもう5年にもなります。初めて手に取ったのも多分4-5年前、その時からずっと本棚にある本です。

本の中に興味深いデータが紹介されています。世の中に溢れる情報の量が何と10年前の530倍にも膨れ上がったという総務省の調査結果です。元は本1冊分の情報量は今や大きな書庫2個分にまで増えてしまった(しかもこの数字は平成18年時点と既に12年も前のデータですから今は更に大きさを増した本棚の山がある事になります)。

消費可能情報量が33倍へ
選択可能情報量は530

(平成18年度データ: 「平成 18 年度情報流通センサス 報告書」総務省情報通信政策局情報通信経済室 より)

そしてブログの普及がこの数字の増加の背景にある事が検証されています。そのブログも含めて個性のない言葉は無視されるどころか、無かったものとして扱われる時代だと、佐々木さんは言い切っています。

例えると図書館に入場して来る人たち全員に玄関で声をかけ立ち止まらせ、自分の本を手渡して『これを是非読んで欲しい』と努力するだけでは、どれだけの人にその本を読んでもらえるか…

人の目に留まり、読んでもらってこそです。そのために必要な、個性のある自分だけの『力強い言葉』を作る事を心がけるキッカケとなったこの本。私はたまに読み返しては5つの方法の解説を反芻しています。ここでは詳細を書きませんが、納得する事請け合いの方法論が書かれている。是非手に取って読んでみてください。

『認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを』

『坊やだからさ…』

『君の生まれの不幸を呪うがいいっ!』

目立ちたがり屋で、数々の名言(& 迷言?)を作ったシャアもこの本を闘いの合間に読んでたのかも…ね。

そしてもちろん、私のブログを書くのにも大きく役に立っている、宇宙世紀まで残したい名著です。

シャア・アズナブル名言集こちら

『「伝え方」が9割』

佐々木圭一 著 (ダイヤモンド社 2013年初版発行)

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