『かしくさや うつぐみどまさる』
沖縄・八重山の海に浮かぶ小さな島、竹富島に伝わる言葉です。
その意味は「皆で力を合わせよう」。
600年も続く『芸能の島』の大イベント
沖縄に魅せられて10年。念願だった竹富島の種子取祭(タナドゥイ)に三線仲間と一緒に参加して来ました。
沖縄・八重山諸島、石垣島近くにある小さな竹富島。海の美しさは数ある沖縄の離島の中でも有数です。
(コンドイビーチの水の透明度は何と驚きの100%)
実はこの島、海の美しさもさることながら、『芸能の島』として知られます。
とは言っても、勿論タレントや芸人達を集めたイベントではありません。芸を披露するのは島に住む人たちです。
この島が『芸能の島』と呼ばれる理由は、年に1度、旧暦多くの伝統芸能を奉納する『種子取祭』(タナドゥイ)と呼ばれる祭りにあります。
毎年秋、甲申(キノエサル)の日から甲午(キノエウマ)の日までの10日間にわたって行われる島最大の祭事 。
中でも祭りのメインイベントは7日と8日目、旧暦9月の庚寅(かのえとら)と辛卯(かのとう)にあたる2日間に行われる奉納芸能。
およそ80もの演目が奉納され、島は祭り一色に染まるのです。
7日目のサチブドゥ(前踊り)は玻座間村が、8日目のアトゥブドィ(後踊り)は仲筋村が芸能を奉納します。同じ演目もあれば、その村独自の唄や踊りもあります。
ですから、いずれかの日だけでも奉納芸能の演目の全てを見ることは可能。
竹富島の住民の方は長い時間をかけてこの祭りの準備を行い、祭りが終わった翌日からはもう来年の祭りの準備が始まります。『芸能の島』と云われる島ならではです。
この祭りは何と600年に渡り続けられてきたという驚くほど長い歴史があります。
およそ640年前、独立した6人の酋長たちがそれぞれの村を治め、長らく分裂していた竹富島。
それが、身内をお互いに嫁がせて、血縁を結ぶ事で従来バラバラに行なっていた奉納の祭りを島全体で行うようになって、六山(ムーヤマ)時代と呼ばれる平穏な日々が訪れる事になったのが、この祭りの起源だと、島では伝えられてきました。
大規模な町内会祭り?
実は種子取祭の主催者は何と竹富公民館。ここが管理するムラオン(トゥクルウガン)のひとつで火の神と農耕の神がまつられる世持御嶽(よもちうたき:ユームチオン)が奉納芸能が行われる舞台。
沖縄の神々を祀る、本土の神社にあたる『御嶽(うたき)』。世持御嶽にある「弥勒奉納殿」に祀られているのが、ミルク神。
そう、実は愛嬌のある八重山諸島のミルク神は弥勒菩薩の事。種取祭の奉納芸能の2日間しか弥勒奉納殿の扉は開かれません。まずは長い間見たいと思っていた本物のミルク様にようやく会えて感激、感激。
種子取祭の芸能はミルク様へ奉納されます。宴会好き、歌好き、踊り好きのミルク様。
このお面を付けるのは代々、海岸で弥勒の面を拾ったと伝わる大原家からそれを引き継いで祀ってきた与那国家の人だけです。
島といっても小さな町が2つあるだけの竹富。種子取祭は、さながら本土での町内会主催のお盆祭り沖縄版です。大きく違うのは、島上げて1年がかりの準備と全員参加という祭りへの想いの深さ… 祭りは島で暮らす人たちにとっては生活そのものです。
島を出て暮らしている竹富出身者も全国から祭りに合わせて帰島するため、島内の限られた宿はこの期間満杯、石垣島からの船も奉納芸能の時間に合わせ往復する臨時便も出ます。
★(追記)
2019.9.1より竹富島へは「入島料」(300円)が必要です。任意徴収ですがリゾート資本の土地買い占めに対抗するための土地購入費にあてたり、環境保護費として使われます。
島の西側に大規模なリゾート計画が持ち上がっただけに行く末が気になります。
(10日、11日に行われる奉納芸能を見るために購入した乗船券。この時だけは特別なスケジュールが組まれている。 2015.11.7に石垣島で事前購入しました)
※18:30ならびに22:00に、石垣への高速船の臨時便が運航。事前確認下さい。
宿は1年前から予約しても遅くありません。宿泊の際にもう来年の祭りの夜の宿泊予約を入れる方も多い。
石垣島に宿を取って2日続けて島に渡ってくる人も。
クライマックスの奉納芸能が行われる2日間は、島内移動の足も限定されます。港と祭りの行われる世持御嶽を結ぶシャトルバス以外、レンタサイクル店も閉まりますし、水牛車やバスによる観光も実施されません。
島民が祭りの主役なので、商売なんてしてる場合じゃない、というわけです。
(世持御嶽から見下ろした下の広場に港からのバスが到着します。港から歩いて来る人もいます)
御嶽前の広場でお弁当の販売もありますが、早々に売り切れしてしまう事もあるので、島に渡る前に準備しておくのが良いでしょう。
(御嶽前の広場の様子 2015.11.10)
ところで、この種子取祭ですが、見学は何と無料です。
奉納芸能を見る桟敷は出入り自由、席も決まっていません。イスではなく、座っての鑑賞になります。
ただし、超高齢の住人や地元の小・中学生には一番舞台に近い場所が準備されます。芸を奉納する御嶽のすぐ横なので、間近で奉納芸能が見られる特等席。
(本当に小さな御嶽です 2015.11.10)
その他の一般の見学は側面および演者の後ろにあたる向きから見ることになっています。
あくまでも神さまのおわす御嶽へ芸を奉納する事になっているのがポイント。
種子取祭は「祈願」「儀式」「奉納芸能」「ユークイ(世乞い)」の4つから成り立っています。
祭りの見学記は、次の記事よりご覧を。
▶️ 種子取祭(タナドゥイ)見学記 –『竹富島で会いましょう』②』
【参考 種子取祭の演目 2015年】
奉納芸能初日
①ンカイ
庭の芸能:世持御嶽の前庭で演じられた芸能
1.②棒
2.③太鼓
3.④まみどー
4.⑤じっちゅ
5.⑥真栄
6.⑦祝種子取
7.⑧腕棒
8.⑨馬乗り
舞台の芸能:特設の舞台の上で奉納された、「玻座間村」の芸能
1.⑩長者(ホンジャー)
2.⑪弥勒
3.⑫鍛冶工
4.⑬赤馬節
5.⑭早口説
6.⑮しきた盆
7.⑯組頭
8.⑰種子取節
9.⑱高那節
10.⑲真栄
11.⑳安里屋
12.㉑世持
13.㉒三人天川
14.㉓鶴亀節
15. ㉔世曳き
16.㉕糸満大漁
17.㉖南洋浜千鳥
18.㉗大浦越路節
19.㉘伏山敵討狂言
20. まんのう
21.㉙桃里節
22.㉚ゆんたしょーら
23.㉛組長刀
24.㉜ペーク漫遊記
25.㉝元タラグジ
26.㉞八重山下ル口説
27.㉟月夜浜節
28.㊱鳩間節
29.㊲ガイジンナー
30.㊳胡蝶の舞
31.㊴かたみ節
32.㊵いじゅの花
33.㊶まるまぶんさん
34.㊷竹富口説
35.㊸曽我兄弟