「チーズが一つ、二つ、三つ… 少々お待ちくださいね…」

アルバイトらしいかわいい高校生の女の子が必死になってレジを打っている。
春休みになってから勤め出したのでしょうか、新顔だ。
よく利用する近くの駅前のパン屋。買うものはいつも同じ、チーズパンとチョコパンを家族もの人数分。

たまにバゲットも買うときもあり、今回も大きめのを1つ一緒にレジに持って行く。

不慣れなのも手伝ってやたら時間がかかっている。
気になって後ろを見ると、何人も僕の後ろに並んでレジを待っている…

(いいよ、いいよ、気にしないで。ゆっくりでいいんだよ)

心の中でそう僕が思っていても、大勢のお客様の列を目の前にした彼女はもう気の毒なくらいあせっている。

おつりももらったし、レシートもさっき財布に入れたばかりなのに。

何をしているのかと思うと… 買ったパンをひとつひとつ、ビニール袋に入れてテープで張ってとめている。
最後に大きなプラスチック袋にようやくまとめていれて彼女は
「おまたせしましたっ!」
と中からあふれそうなぐらいパンパンに膨らんだ大きなビニール袋を僕に渡した後、
「は~」とため息をついたように思えました。

僕の買ったパンは全部で10個。確かに多かった。

ほんの数分待っただけなのだけれども、僕は背中にいやな視線をずっと感じていた。
言うまでもなく、会計を待っているお客さんからのもの。
そして彼女は真正面からそれをずっと受け止めていたのです。

(ひとつひとつ、入れなくてもいいのになあ…)

「パン」はビニール袋に入れなければいけないのでしょうか?

確かにチョコレートが表面に塗ってある菓子パンなどはビニールに入れないと、すぐにお互いくっついてベタベタになってしまったりしてしまい、酷いときは家に持って帰って食べる時にはすでに「チョコレート大福かよ」という具合に溶けてしまってる事もあります。

でも、例えばケーキを頭に浮かべてみます。

チョコレートなどがのっかているという点ではケーキのほうがよほどくっついてしまう危険があります。そこでケーキはだいたい紙の箱型パッケージに入れて持ち帰るのが普通になっています。

では、パンも同じような箱に入れて持ち帰るようにしたらどうなのでしょうか。

こんな話を家でしてみると帰ってきた答えは…

「何言ってるの、ケーキだって透明のセロファン(ケーキフィルムというそうです)が巻いてあって、違うケーキとくっつかないようにしてあるでしょ。パンならケーキみたいに高いものじゃないから、ビニールで十分なのよ」

「パン」と「ケーキ」では、庶民と貴族ほど扱いが違うのかい??

パンを箱にいれるのは、確かに包装の簡素化という点では逆の方向を向く発想なのかもしれません。
(でも、ビニール袋は大概ゴミとして捨ててしまうのに比べ、紙箱ならリサイクルに回すよなあ)

この点はもういちど、パン屋さんに聞いてみなければ… うん。

紙袋でもない… 結局「菓子パン」にあった包装は?

では、同じ紙でも、「紙袋」はどうだろう?

普段よく出張に行くドイツではバゲットは紙袋に包んで持ち帰るのが普通。
パンがビニール袋に入れられているのを見たことがありません。
日本と比較して確かに菓子パンは少ないのですが…というか菓子パンって見たことあったか?

翻って日本ではバゲットも何故かビニールが多い気がします。

焼きたてのおいしい食パンでさえ、なぜかビニールなのですよっ!
ビニールでないとあっという間に乾燥していくという意見も知っています。
スライスした面はたった5分でもみるみる乾燥して肌荒れしてニキビ顔になっていきます。

「紙だと中のパンの形が崩れるし、持ち帰る間に敗れてしまったりするのですよ」
という意見もある。

乾燥したドイツでの包装と多湿な日本でのそれを単純比較もできないし。

ビニールか、紙袋か、この点はパン屋の間でも意見が分かれているようで… 結論が出そうもない。

ふわふわ、ちょこっと人肌っぽいあったかさの出来たてパンの表面。
つぶつぶの気泡。指で真ん中を押すと「むにゅ~」とこれも病み付きにありそうな(変態か)、あの感じがいいのに!

確かに出来立てのパンには余熱が残っているので、裸というわけにはいきません。
が、ビニールで「ガバっ」とくるんでしまうのが悲しい(せめて、口をちょっとだけ開けておいてもらえるといいのに…)。
紙袋なら尚、いいが、
「申し訳ありません。当店はビニール袋しか準備がありませんので…」
といわれションボリする事もある。

外カリッカリ、中はふわふわの焼きたて、が一番おいしいパン。

僕が出来る事は…これかな。

「パン屋のこだわり」もあります。
”かさかさのクロワッサン” と ”たっぷりチョコレートパン” をがっさり一緒の袋にいれない、とか。 混ざり合ったらすごい味になりそうな ”あんパン”と”たっぷりチーズくるみパン” も別々にするとかも。

いや、これはこだわりではなく、守るべき「基本」ですかねっ!

過剰包装のコストや手間もはぶくパンの包装を考える事が出来たら、画期的です。
ONE FOR ALL のオールラウンドなパンに使える包装、大金持ちのチャンスあるわ、これ。

今のところ僕が駅のパン屋のバイトの彼女に出来る事は、
僕の後ろに並んだ列を作るお客さんの方を向いて、彼女にかわってニッコリと微笑みながら

『すいませんねえ、こんなにたくさん買っちゃって、時間かかっちゃいますよね』

ということしかなさそうです。