日本最大のサンゴ礁は沖縄本島よりさらに南、八重山諸島にあります。
石垣島の西、西表島との間に広がる「石西礁湖」。
その「石西礁湖」は2017年1月にサンゴ全体の7割がいわゆる「白化現象」によって死滅したと環境省から報告されました。
水温の上昇やオニヒトデによる被害。特に水温が高いとサンゴは藻類を放出してしまうため見た目も真っ黒になってしまう。
水温が低くなればまた成長を始めるサンゴですが、石西礁湖のサンゴは2019年2月現在でも回復には程遠いのが実情です。
繰り上げ当選、ではないのですが、石西礁湖に負けず劣らず大きなサンゴ礁が同じ八重山諸島にあります。
宮古島の北、最近橋で直結された池間島の沖合に位置する「八重干瀬(やびじ)」です。
目下、日本最大のサンゴ礁、八重干瀬
「幻の大陸」、八重干瀬(やびじ)の地図は、「池間島ガイドマップ」が参考になります。
すまだてぃ(島おこし)活動の一環として地元、池間島離島振興総合センターで配布されている力作(いけま支援福祉センター)。
この八重干瀬、大きさは南北17Km、東西7Km、周囲が25Km以上にもなる途方もない大きさです。海面に出ている部分だけでも東京ドーム2,000個以上!
過去に宮古島のダイバーが総がかりで大きさを測ってギネスに申請しようとトライしたほど。
この地図に記載のあるサンゴ礁は117。驚くことにその全てに地元のコトバで名前がつけられています。
豊富な魚や海藻の恵みを人々にもたらしてくれる、「インヌパリ(海の畑)」として大切にされてきた故です。
さて、このリーフ群は常時海面上に出ているわけではありません。
ですが、この八重干瀬の海域には年に数日、「幻の大陸」が現れます。
その正体こそがサンゴです。サンゴが群生するサンゴ礁。
数あるリーフの中でも最大級の大きさである「カナマラ」「ウツ」「ドウ」などは、旧暦3月3日、『サニツ』と呼ばれる大潮の日だけ海の上にその姿を現せ、それがあたかも巨大な大陸に見えるのです。
かつてはこの巨大大陸出現の日にあわせて八重干瀬のリーフ「カナマラ」と「キジャカ」へと宮古島港から船で上陸するツアーが30年にわたり実施されていました。
しかし環境へのインパクトの懸念と、上陸に使っていた伊良部島へのフェリー船が、伊良部大橋の開通で廃止されるのにともない、ツアーもなくなり、現在では上陸ができなくなっています。
最後の上陸ツアーが行われた2014年春、幸運にもこの八重干瀬に上陸することができました。
まず目指さなければいけないのは、宮古島。
石垣島、西表島などの八重山群島からは少しはずれて位置しますので、ぽつねんと海にうかんでいるイメージがあります。
実は八重山の中心、石垣島よりも若干ですが多くの人が住んでいます。
石垣島と違って山が少なくほとんどが平地だからでしょう、長きにわたって人の営みが続き、独特の島文化が根付いています。
以前別記事で紹介しましたが、この宮古島にはパーントゥという、いわゆる「来訪神」の奇祭が長年にわたって行われています。
▶️記事『参加するには覚悟必要!? まだ間に合う、ご当地ハロウィンの決定版 宮古島の『パーントゥ」』
この祭りにも参加したいと長年思っているのですが、これは10月最後の週末の行事。またの機会にします。
幻の大陸に上陸して見たものは…
春の沖縄。天気は花曇りですが雨が降りそうな気配はありません。
観光にはまずまずの天気といったところでしょうか。
宮古島、平良港を出港する2日だけのツアーフェリーに乗船です。
船の中は今年で最後になる八重干瀬上陸ツアーに向かう人でいっぱいでした。その数約250人。
およそ1時間、前方に砂地で覆われた陸地が見えてきました。
船はこの島を目指します。
まさか、ここまで大きくはないだろうと思っていると、船内アナウンスが。
「間もなく目的地、八重干瀬のリーフのひとつ、カナマラが前方に見えています」
なんと!
島だと思っていたものは実は巨大なサンゴ礁であったのです。
カナマラへの上陸風景。
サンゴ礁へ直接、艀を落とすなど、今でも議論が残る上陸方法でしたが、長年このように大潮の数日は上陸ツアーが行われていました。
恐る恐る足を差し出して上陸。
当然、サンゴの上を歩くのですが、相当に硬かった。踏んだらくずれるような硬さではありませんでした。
もちろんデリケートな環境ですから、一歩一歩慎重に進みます。
船からどんどん歩いていきますが…
カナマラの「大地」(?)は遥か先まで見えます。いや、広いっ!
地元の漁師たちには『インヌパリ(海の畑)』と呼ばれてきたように水生動物の宝庫である八重干瀬。たくさんの生き物たちを観察できました。
【八重干瀬で見た生き物たち】
クモヒトデ、カニ、ウニ、ウミウシ、エダサンゴなどを身近に見る事が出来ました。どこまでも密生するサンゴ。
海の中に咲くはののようなイメージとは全く違いますね。
フェリーが出港するまで、約1時間ほどですが、十分にその大きさと豊かさを実感できました。
短い大祭でしたが、カナマラを後にして、再び宮古島へ戻ります。
遠ざかるカナマラ。
八重干瀬のサンゴが危ない!
この体験記で記したようなサンゴ礁への上陸ツアーはもうありませんが、シュノーケリングやダイビングで楽しむ事は可能です。
しかし…
私が訪れたわずか3年後の2017年。
この八重干瀬のサンゴも大規模に白化現象により瀕死の状態であることが報道されていました。
恥ずかしながらこの事実を知らなかった私。
記事を書くために今の現状をウェブで調べていて目に留まったのでした。
これには大きなショックを受けています。
実際には2016年の異常な海水温度の上昇が影響しているようですが、間違いなく地球温暖化の影響。
長い期間、海水の温度が高い状態が続くとサンゴが耐えられません。
上陸したうしろめたさも多少は感じながらも、貴重なこの環境に接するチャンスに出会えた事は幸いでした。
【離島の大自然に興味のある方に】