38年ぶりに噴火した世界一の大きな山
2022年11月27日深夜、ハワイ島の活火山・マウナロア噴火のニュースが飛び込んできました。
山頂に登り巨大な火口を目にした数少ない日本人の1人として、とても驚いていると共に、あの素晴らしい風景が変わってしまうのではないかと気を揉んでいるところです。
『常夏の島ハワイ』と言えば誰もが思い浮かべるのが海。
ワイキキに代表されるハワイアン・ブルーの海も素敵ですが、個人的にはハワイの1番の魅力は「山」だと思います。
ハワイで登山?
ハワイの島々の中でも、特にハワイ島は、地球上で最もダイナミックな火山活動を見る事が出来る『火山博物館』。
溶岩が作り出した荒涼たる大地が、果てしなく続く大陸的風景を初めて見る人は、「これが、ハワイ?」と驚かされます。
この写真は島の西側、カイルアコナの街の北の海岸線。
島とは思えない風景です。
ハワイ島の地図を広げると、2つの大きな火山が島の大部分を占めているのが分かります。
分かりやすいのが、ハワイ島ボルケーノ国立公園のビジターセンターにある島の模型です。
島の真ん中に盛り上がった巨大なこげ茶色の山にぽっかり開いた噴火口。
谷を挟んで、黄土色の急峻なもう一つの山。
まるで、島そのものが、山です。
このハワイ島の大部分が、こげ茶色のマウナ・ロアという大きな山そのもの。
標高も 4,169 m もあり、富士山より高い。
そして、もう一つの黄土色の山が、マウナ・ケア。標高はこちらの方がマウナ・ロアより少し高く、4,207 m 。
山頂は環太平洋で1番高い場所で、日本の「すばる」はじめ各国の天文台がある事で知られていますね。
こちらは、富士山を越える高度とはいえ、山頂まで車道が通っているので、高山病に気をつける必要はあるものの、比較的行きやすい。
カイルアコナの北側の山麓から見ると、マウナ・ケアの山頂に白いいくつもの建物が見えました。
これが各国の天文台で、ツアーなどで車で行く事が出来ます。
一方のマウナ・ロア。
この大きな山の頂で、模型に示されている大きな噴火口までの道のりは簡単ではありません。
世界一大きな山、マウナ・ロア
ハワイ島は意外と大きく、日本の四国の半分、岐阜県とほぼ同じ面積。
マウイ島やオアフ島など、他のハワイ諸島の島々がすっぽり中に入ってしまうほどのサイズでアメリカ最大の島。
休まずハンドルを握って車で走っても6時間以上もかかる。
この大きな島を形作っているマウナ・ロアという巨大な火山、間違いなく「世界一」の山です。
「世界一」なのは高さではなく、その「大きさ」がです。
これはマウナ・ケアに登った時に見たマウナ・ロアの全容。
雲海の向こうに大きく裾野を広げる姿な雄大ですが、イマイチそのすごさが分かりません。
それは、あまりにも大きすぎるからです。
マウナ・ロアの凄いのは、その容積。文句なく『世界一』です。
その体積は、75,000 ㎦、地球上で最も体積の大きな山で、富士山(1,400 ㎦)の何と 53.6倍!
海の底から9,000 mもせりあがっているので、仮にハワイ島の海岸から山頂を目指すと4,169 mを登らないといけません。
標高5,400 m のチベット高原から 8,848 m のチョモランマ(エベレスト)を目指すより標高差がある。
(ちなみに麓から山頂まで世界で一番標高差がある山は北米アラスカ州のデナリ(マッキンリー)山で 5,600 m )
あまりにもマウナ・ロアの山容が、のっぺりしすぎている上に、周りに比較する別の山などもないので、その大きさがイメージしずらいのです。
無理やりですが、過去に撮影した河口湖付近から撮影した富士山の写真を見つけて、並べてみました。
写真の中に富士山をゲストに迎えて並んでもらい、ようやくその凄さが実感出来ました。
うーん、デカイ。本当に圧倒されます。
マウナ・ロアに登りたい
ビジターセンターの島の模型をよく見ると、マウナ・ロア山頂に大きな噴火口があるのが分かります。
ここまで巨大なマウナ・ ロア山を作り出した地下のマグマを噴出してきたであろう火口。
その大きさはケタ外れ… 何と直径9 km !
博物館で聞いてみると驚くような返事が返って来ました。
富士山頂の「お鉢巡り」が一周3 km 、火口の直径が約800 m ですから、マウナ・ロアの山頂火口は比べ物にならないほど巨大です。
うーん、是非見てみたい。
ハワイに行くからには、「そこに山がある」なら登ってみたいのは、山好きならしごく当然の事。
しかし、限られた旅のスケジュールの中で、こんな巨大な山に登る事が出来るのだろうか?
『 1 day trip, but need good fitness 』
公園レンジャーの言葉は意外でした。
デイトリップ? まさかなんでも1日では登れっこないでしょう。
ところが、マウナ・ロアには唯一日帰りで山頂を往復出来る『北東ルート』の名付けられたトレイルがあるのだという。
標高3,370 m の高さにある気象観測所まで通じる車道を利用すれば、そこから6時間で山頂のモクアウェオウェオ火口の火口壁にある最高点へと到達するルートでした。
日帰り可能な唯一のトレイル、それでもチャレンジング
マウナ・ロア山頂を目指すトレイルは、普通にイメージする山の道とは全く違います。
延々と、月面世界を思い起こさせる風景の中を、溶岩の上を歩いて行くのが、マウナ・ロアの山頂への唯一の手段。
そう、山そのものが、溶岩のカタマリなので、その上をいくら人が歩こうが、「踏み跡」がつくわけがない。
ですから、ルートを見定める唯一の道標は、『ケルン』だけです。
似たような火山風景の中を、ケルンを探してひたすら歩いて行くのが、マウナ・ロア登山。
ケルンはもちろん人が積み上げたものですが、目立つようにペイントされているわけではありません。
行く先にケルンを見つけてたどり着く、そこで再び次のケルンを探してまたそこまで歩く、の繰り返し。
ケルンと、ケルンの間隔も相当ありますので、常に目を凝らして、景色に溶け込んでしまっているケルンを探すには意外に時間がかかります。
また、いくつかのケルンが別方向にある事も。
誰かが頻繁に登山道の整備している山ではないので、前の登山者が迷わないように積んで行ったケルンが無秩序に散々している事もありました。
ルートを外したら、それこそ一大事です。
水場もない、人もほとんどいない、同じような風景の中で方向も定まらない… 助けを呼ぼうにも携帯の電波も入らない 場所です。
日帰り可能なマウナ・ロアの北東ルートですが、十分な登山経験と準備が必要です。
え、この記事は山とコースの紹介だけで、登山記はないのか、ですって?
いえいえ、ちゃんと山頂に登りました。
火口も見てきました。
そして、やっぱりチャレンジングな登山でした。
読み終えてからハワイの海とは別の魅力にはまってしまっても保証しませんからっ!
マウナロア登山の記録はこちら↓