いよいよ長石道へと本格的に入ります。
→ 高野山 長石道 平安時代の「グレートトラバース」を 語り部と歩く ①
慈尊院から石段を上がると正面に別の鳥居が見えてきます。
狩場明神を祀る丹生官省符神社(にうかんしょうぶじんじゃ)です。
お寺の向こうに現れるのが神社とは。まさに神仏習合の名残です。
ここでうんちくをひとつ。鳥居の足元に小さな別の支柱が建てられていて、大きな柱を安定させていますね。これが「両部鳥居」。
神仏習合の特徴があらわれている鳥居です。寺社の近くに八幡様があったりするときによく見かける鳥居なので、よく注意して見てください。
語り部さんが一緒だと、色々な話が聞けて楽しい。特に歴史を訪ねる旅にはこのような知識豊富な方がガイドとしているといないでは楽しみ方に雲泥の差が出てくる。
自分も通訳案内業の免許(英語)を持って入るのだけれども、ここまで細かい知識を頭に入れて案内が出来るだろうか…
余談ですが、高野山に来る外国人は圧倒的にフランス人が多い。これは日本文化への興味に加えて、宗教的好奇心が大きい国民性によるものだという。宿坊体験など実際に自分が学べる環境が整っている高野山のような場所は今後も多くの外国人の目的地になるでしょう。
ヒメジャノメが近くで花の蜜を吸っていました。
ご一緒した語り部さんは高野山の歴史や神社仏閣だけではなく、足元の小さな虫や花たちも見逃しません。高い山には登らないけれども、吉野・高野山周辺の地元の山を自分の休日に語り部として依頼を受けた人を案内しています。
このような地元での登録制のガイドはユニークな試みです。
しばらくして綺麗な竹林に入りました。
町石は道のすぐそばにあるかと思えば少し離れた山の中に目立たずひっそりと建っているものもあります。語り部さんは慣れたものですぐ見つけて教えてくれます。
目を見張る大きさのタケノコが。
子供が引っこ抜こうとしても、ビクともしません。
って、オイ、抜いちゃダメでしょっ!
季節は春から夏へ移るさなか。盛りのツツジが目を楽しませてくれる。
町石は次々と現れます。
一町は約109.09メートル。
もとは条理制で六尺を一歩として60歩分の距離でした。60歩なんて、あっという間です。意外と早く次の町石が見えてくるのです。
百七十三町石。
モチツツジの花。独特のよい香りが漂ってくる。
語り部さんは歩くペースもさすがに分かっています。うまく子供をあやしながらも歩くモチベーションを保ってくれます。こちらも楽だ、こりゃ。
それにしても綺麗な竹林です。
この花はラショウモンカズラ。
突然、視界が開けました。遠くに山並が見えます。
「あれが高野山ですよ」
「ど、どれですか?」
「奥の山、ぜーんぶそうです」
えええっ、あんなに遠いんですか?
ここは引山手前にある展望台。
左の一番高い山が奥の院の背後にある高野三山の一つ、楊柳山 (1,008.5m)。奥の院はその右下あたりでしょうか。
右手が大門付近の弁天岳 (945m) 。
高野山の範囲はかなり広く、そこには東西5キロ、南北3キロの中に現在2,500人が住む天上の町があります。
実は20キロ以上ある町石道の行程中、高野山が見える場所は少ないのです。
しかし、遠い。あんな遠くまで今日1日でいけるのだろうか…
それにしても空海さん、年老いたお母さんに会いたい気持ちはわかるけれど、月に9度もこの道を往復するなんて…
3日に1度ですよ! 本当に修行していたのかしらん(失礼!)…。
ここから登りは少し急になって来ます。
天気は最高、景色も爽快。
紀ノ川と右の一番高い山は国城山(552m)。
百七十八町石。
ウツギの白い花。
六本杉峠。ゆっくりと歩いていたらコースタイムの倍、3時間もかけていた。ここからは少しピッチをあげましょう!
テンナンショウの仲間。
かわいいハナイカダ。
樹林の中であまり花は期待出来ないと思っていましたが、それなりに見る事が出来ます。
たどりついたのは、「二つ鳥居」。
ここから見える「天野の里」。
高野山の隠れ里、といわれ標高450メートルの山間にひっそりとある山里です。
ここには、あの丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)があります。
空海は、真言密教(仏教)の修験に理想的な場所を求め高野山に至りましたが、それを請うためにこの地の守護神である丹生都比売大神(にうつひめおおかみ)と高野御子大神(たかのみこのおおかみ)を祀るお社をこの天野の里に建てました。
これが世界遺産の構成要素にもなっている丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)。
日本の「神と仏の融合」はまさにここから始まったのです。
本来はこの丹生都比売神社に参ってから高野山を目指すのが王道なのですが、さすがにあそこまで往復は大変です。
なので、丹生都比売大神と高野御子大神それぞれを祀る鳥居を建て、ここから参拝をすることになったのです。
なるほど、と語り部さんの話に納得するのでした。
長石道は高野山にむかってまだまだ続きます。
(続く)