『ぼーっと生きてんじゃねーよ!』トーハクで叱られた話。 『大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』展

 

特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけが東京国立博物館(トーハク)・平成館で開催されています。昨年の同じ東京国立博物館での『運慶』』展、京都国立博物館の『国宝』、そして今春から同じく東京国立博物館で開催された『仁和寺と御室派のみほとけ -天平と真言密教の名宝 – 』、現在サントリー美術館での『京都・醍醐寺 真言密教の宇宙』と仏像ファンにはたまらない展示が続いています。普段、神社仏閣で拝観する際には遠くから拝むことしか出来ない貴重な仏像様たちが、間近で鑑賞出来ます。また普段絶対見られない後ろ姿まで360度オープンの展示も多く、全国各地の秘仏もこれでもかというぐらい出て来る大盤振る舞いの様相。もう日本の寺社あげてのおもてなしといった嬉しい状況です。

今回足を運んだのは、鎌倉彫刻の集団群像彫刻の傑作、快慶作『釈迦十大弟子像』と肥後定慶作『六観音菩薩像』が一堂に会する、まずこの先見ることは叶わないであろうシーンを目に焼き付けたかったからでした。とにかくこれだけの仏像たちが立ち並ぶ空間に自分を置いてみたい衝動が有りました。しかし、初めは単に鑑賞対象、つまり美術品としての仏像を見たいとの思いだけでした。

ところが… いざその空間に足を踏み入れるや否や、まず出くわす快慶作『釈迦十大弟子像』。10体の木造が並ぶ壮観な様は威圧される程。強烈な視線のビームが四方から自分に突き刺さり、まるで金縛にあったように身体が硬直して緊張しました。薄暗い異次元の空間から20の鋭い眼光が発せられ、自分があたかもこれから彼らに試されるような緊張感。中には眼を閉じている像もあるのに、あたかも心の眼、「心眼」で刺すように見られている気がするのです。まるで、彼らに今の、そして今までの自分を測られているようでした。自分の心に飛んでくる彼らからの檄、そして『喝!』…

☆舎利弗(しゃりほつ)/ 智恵第一

『どうした、ケニー、最近は好きな美術鑑賞などにうつつを抜かし外国語の勉強が疎かになってないか。喝!』

☆摩訶目犍連(まかもっけんれん)/ 神通第一

『ハピネスを届けたいなどとブログで申しておるが、言うように人に届いておるのかの… 喝!』

☆摩訶迦葉(まかかしょう)/ 頭陀第一

『清貧を第一とするわしには、おぬしの趣味に散財する生活は贅沢にすぎるぞい。喝じゃ!』

☆須菩提(しゅぼだい)/ 解空第一

『執着を捨てたわしに比べ、Apple Watchとかすぐ新しい物に飛びつく…どれほど物欲にまみれておるのじゃ。喝を入れてやる!』

☆富楼那弥多羅尼子(ふるなみたらにし)/説法第一

『言葉上手とか周りに言われて、誰でも説得出来ると自惚れておらんかね? 喝!』

☆摩訶迦旃延(まかかせんねん)/ 論議第一

『お前の問答はいつも理屈っぽくゴリ推しじゃ。相手を立てての議論じゃぞ。喝っ!』

☆阿那律(あなりつ)/ 天眼第一

『眼が見えぬわしは心を磨いて全てが見える。おぬしの汚れた心がよーく見えるの。わがままで自己中心的じゃな。喝!!』

☆優波離(うぱり)/ 持律第一

『戒律を守れ。現代でも約束事はきちんと守るのが基本。そなた家庭での小さな約束事が出来ておらんな? 喝ーっ!』

☆羅睺羅(らごら)/ 密業第一

『隅々まで怠らず精進じゃ。そう、目を配るのが大事じゃ。お主の目は細部を見ておらん。大事な事をよく見落としてよく忘れ物で周りに迷惑をかけておるな…喝っ!』

☆阿難陀(あなんだ)/ 多聞第一

『話をよく聞くのじゃ。いつも人が話し終わる前に我慢出来ずに喋り出す、お前の悪い癖じゃ。喝!』

☆☆☆『喝!喝!喝!! ぼーっといきてんじゃねーよ!』☆☆☆

あれ? 最近人気のテレビ番組で聞いたような? 5歳の女の子からならともかく、御釈迦様に付き従った弟子たちからの檄ですから、それはそれは強烈。

図らずも美術鑑賞に行ったのに、自分を省みる事になりました。10人もの賢者達の前で、ケニーはまだまだ未熟な人間である事を自覚しました。色々な面でまだまだ精進が足りないんだな。

しかし、ちょっと落ち込んでるのを救ってくれたのも実は会場に展示されていた仏像たちでした。

肥後定慶作、六観音菩薩像(写真は撮影可能な聖観音菩薩立像)。釈迦の弟子達に問答を挑まれ、くたくたになった後にはちゃんとみほとけの癒しの微笑みが。最後にはありがたい気持ちになる、何とも心憎い構成の展示会でした。


★2018/11/1はてなブログ投稿記事を移動・再編集しました。