『ちょっとビール買ってくる』
たまには、風呂上がりにビールを、と思ったのに冷蔵庫の中のストックは切れている… 仕方がない、散歩ついでに買いに行こう。
そう思って缶ビールを買いにふらりと出かけたのは近所のスーパー。
どうせならビールのつまみに何かないかと 製品棚を眺めてふと頭に浮かんだのは…。
「サラダチキン」
タンパク質を積極的に摂るよう心掛けている理由があって、以前は見向きもしなかったのですが、最近は良く食べています。
心臓手術をした後は、食事には随分気を使うようになり、減塩、栄養バランスはもちろんのこと、人工的に作られた添加物を極力含まない製品を買うように心掛けています。
棚に並んでいるたくさんのサラダチキン。
何を買うにも、今は必ず包装に記載されている成分表示を見て、チェックをしています。
一つ一つ見ていきます。すると…
『あれ、なんで同じ製品なのに表示が違うんだ?』
なぜか同じメーカー、同じサラダチキンなのに違う表示が…違う???
同じサラダチキンなのに、違う食品表示の不思議。
2915年4月に食品表示法が施行されてから随分時間が経ちます。
この新しい基準では原材料名欄にははっきりと「原材料」と「添加物」を明確に区分しての表示が義務付けられました。
ほとんどのメーカーが最初に原材料を「、」(カンマ)で区切って並記しています。
例えばこのサラダチキンの場合は、
●原材料名:鶏肉(国産)、食塩、砂糖、粒状大豆たん白、清酒、しょうが、香辛料….ここまでは納得です。
片方はその後に「 / 」(スラッシュ)が続き、これより後は「添加物」になります。
●リン酸塩 (Na)、調味料(アミノ酸)、PH調整剤 が入っていることになります。
ところが、一方は「 / 」(スラッシュ)なしでそのまま添加物の名前が続いています。
そんな馬鹿な?
同じサラダチキン、同じメーカー、同じ包装。
不思議に思ったので2つとも購入して、じっくりと家で比べてみることにしました。
さて、まずはその表示がコレです。
そして表の包装の表示です。
製品名は…
一つはサラダチキン。
もう一つも確かにサラダチキン…アレ、小さな文字で「スライス」と横に文字が入っているのに気がつきました。
よく見ると確かにスライスされて真空パックされている。
あらかじめナイフを入れて、食べやすいサイズにしてあるのでした。
でも、サラダチキンはサラダチキン。
一見それしか違いはなさそうだ。
パッと見の包装デザインも同じ、栄養表示(表側に大きく書いてある)も変わらない。
つまり、同じ製品をカットしないで包装してあるか、カットして包装するか、だけが製品の違いと思える。
それでも念のため、2つとも開封して実際に食べて比較してみました。
うーん、どちらも同じ味にしか思えない。
では、なぜ表示方法が違うのだろうか??
『食品表示法』は施法されたけれど…
2015年4月1日に
スライスされているサラダチキンの原材料表示はスラッシュ( / )以外は「スライスなし」と違いは全くありません。
スライスされているので賞味期限が短く、保存のため異なる添加物が入っているわけでもなさそうです。
これは何か理由があるに違いないと思い、ゴソゴソ調べてみました。
すると、『食品表示法』そのものを理解していないとなかなか納得できない事実がわかってきました。
食品表示法では、
『加工食品では2020年3月31日製造分までは旧表示でよい』
という事で、移行期間があるとの事。
事業者向けではありますが、消費者庁による分かりやすいガイドが配布されていましたので、リンクを張っておきます。
なるほど… 一斉に表示が変わったのではなく、移行期間があるのか。
確かに包装の印刷を変えるにしても大手で流通量の多い商品であれば並大抵のことではないでしょうから、これは仕方のないことかもしれません。
ですが、次に考える事は、”『加工食品』とはどこまでの商品を指しているのか” という事になります。
私が手に取った『サラダチキン』。これはその加工食品だと思うのですが、正しいのでしょうか?
簡単に誰でもわかる次のような製品は加工食品です。
●練り物(ちくわ、カマボコなど)
●レトルト食品
●缶詰
●インスタント食品
●菓子類
●乳加工品(チーズ、ヨーグルト等)
●冷凍食品
原材料に何らかの加工を施せば、それは『加工食品』になります。
今回比較したサラダチキン。
そもそも『サラダチキン』そのものが一般的には加工食品の範疇で表示義務があるのではないかと思うのですが。
確かに移行期間中であるという事で、片方はスラッシュ表示、もう片方は従来表示、という状況であっても、すぐにルール違反とは言えません。
スライスのある、無しでの包装デザインはほとんど変わっていないことから、変更の手間が理由で表記がわかれる対応になっている、とは思えないのです。
まさか『スライス』したものを ”加工した” としているのでしょうか?
どうも納得がいかない…
結局、自分で学ぶしかない
この商品は流通大手のPV(プライベートブランド)製品。
そこで、売り場で直接疑問をぶつけてみましたが、その回答はあっさり…
『申し訳ありませんが、順次新しい制度に対応している状況で、移行期間終了時には全て対応できるとしか… あとはコールセンターにお問合せいただければ…』
杓子定規な言葉が返ってきただけ。
販売現場ではそこまでの応対がきちんと出来る状況にはないように見受けられました。
チキンサラダは生鮮食品ではなく、間違いなく加工食品です。
ですが、塊(チャンク)と、スライスされたもので、表示方法が違うのは、移行期間中であるとはいえ、誠にややこしく、混乱する。
いっそ、両方同じタイミングで切り替えてくれたほうが、はっきりして誤解もなくなるはず。
それにしても、『食品表示法』を少しウェブで調べるだけでも、その複雑さがよく理解出来ました。詳細は省きますが、法令を理解し、表示を正しく理解するのは一般消費者にとってはあまりにも難しすぎる。
調べた中でここでは一つだけ、成分表示・添加物にかかわる大切な事を書いておきます。
それは、『キャリーオーバー制』についてです。これも一般消費者にはあまり知られていない制度。
これはかいつまんで言えば
『食品製造工程の途中で使用されても、最終製品に含まれない(であろう)成分は記載が不要』
というルールです。
つまり、
●元の原材料の状態も表示されない
●途中で使用される製品も表示の必要はない
ということです。
知れば知るほど、複雑で正確な理解をしようとするとどんどん専門的になってしまう『食品表示』。
それは、『食品表示検定』なる試験が存在する事で裏付けされます。
膨大な内容のある法令を理解し、製造者と消費者の懸け橋になる役割を担う事業者の方々を対象とした試験。初級・中級・上級とあります。
このような検定があるほど、消費者が正しく表示を理解するのはハードルが高いようです。先の私の質問に製造者が明確に回答出来なかったのもむべなるかな。
では、消費者目線の簡単で分かりやすい表示が広まるには、経過期間が過ぎるのを待つしかないのでしょうか。
いや、それまでに消費者である我々も、目を肥やしておくべきでしょう。
やはり自分の健康は自分が積極的につくり、守る時代です。
『包装の 裏見る人に 来る健康』
… おそまつ。