京さんぽ ①京都タワー

旅行者を出迎える、京都の『顔』。

京都駅。新幹線がホームに滑り込むと見えてくるのがこの『京都タワー』。東寺の五重塔とともに京都の『顔』として旅行者を出迎えてくれます。地上からの高さ131メートルは市内で最も高い建造物です(ちなみに東寺の五重塔は54.8メートル)。

(2018.11.25 京都駅から)

新幹線ではなく、JR在来線で到着するとホームからは見えず、改札を出て、烏丸中央口の階段を降りようとすると目の前に『でん!』といきなり目に飛び込んでくるのが、上の写真。

見たことの無い人には高さのイメージがつかみずらいのですが、神戸ポートタワー(108メートル)や、横浜マリンタワー(106メートル)とほぼ同じ高さ。ちなみに大阪の通天閣も103メートル。

日本には『全国タワー協議会』なるものがあるそうで、すぐに調べられました。

https://www.japantowers.jp/

実際にこのタワーに登った事はありません(唯一昔たしか、修学旅行で登った記憶があるぐらい)。京都にはよく来るのに駅からはさっさとバスや徒歩で目指す寺社仏閣、博物館や美術館へと向かうのがあたりまえなのですが、海外旅行者などには意外と人気があるようだ。

確かに駅前なので、電車の待ち時間などにちょっと行ってみよう、と気楽に訪れることも可能です。

地下3階には大浴場があったのですが残念ながら2021年6月末を持って営業終了。京都が好きで頻繁に名古屋から来る身としては、格安の夜行バスを利用してよく来るのでとてもありがたい存在でしたが、コロナ禍での短縮営業が続いていたので相当に厳しかったのでしょう。残念です。

(夜空に輝く赤いライトが目立つタワー 2021.2.28)

タワーを見て悩む、謎の裸体男。

この京都タワー、日本武道館も手がけた山田守が設計した京都発の高層建造物。時代は東海道新幹線開通、東京オリンピックの年1964年。

川端康成、司馬遼太郎、土門拳、谷崎潤一郎、丹下健三といった名だたる文化人が「応仁の乱以来の京都を破壊する行為」だとタワーの建設に猛反対。日本で初めてといわれる景観論争となりました。

そんな過去の論争を改めてタワーを見てかみしめているのか、はたまた今のコロナ禍の世を憂いているのか、タワーに向かって座りこみ、思索にふけっている男が一人いる。しかも、一糸まとわぬ姿で…。 彼は誰だ?

(そびえるタワーを見て何を想う? 思索にふけるロダン作『考える人』。2021.8.22 京都国立博物館)

きっとタワーの展望台から目を凝らして博物館の方を見ても、双眼鏡や望遠鏡でなら、裸で石に座って思索にふけるこの像が見つかるに違いない。なんてシュールなんだろう。

古都に溶け込む近代建築へ。

何と円筒状の鋼板を溶接でつなげた基本構造で、鉄骨が使われていない京都タワー。当時、山田守の先進性が伺えます。1,000年の都に超近代建築を、しかも中心駅の前に建てるとは、やはり大きな議論を呼んだのも納得します。

が、いまやそれも昔の話。京都タワーは今やこの古都にも見事に溶け込んでいるようです。

(2021.2.28)

2016年にメルパルク京都の地下に保管されていた羅城門の 1/10 模型が京都駅前のタクシー乗り場東(ちょうどグランヴィア京都のむかい側)に移設されています。

これは、1994年『平安遷都1200年記念事業』で『蘇る平安京』展に出展された精密な復元模型。宮大工さんたちが力をあわせて復元したものなので1/10とはいえ本物感抜群。

『平安京の象徴』であった羅城門と現代建築のコラボレーションがここで見られます。

夜は模型がライトアップされ、なかなか素敵なツーショット。

暗くなるとタワー上部にある展望台下部の赤色部分がより輝きを増していやでも目立つのに気が付きますね。まるで異世界や宇宙からの訪問者が乗ってやってくる円盤そのもの。

この赤と白の模様は高さ60メートルを超える建物のため、航空機に対して昼間の障害標識が必要とされるためで、東京タワーなども同じ(東京スカイツリーが赤と白でないのはこれとは別の「高光度航空障害灯」を点滅させているからで、京都タワー建設の時代にはなかった技術)。

パリのエッフェル塔も建設された当時は大論争となりましたが、今や街には欠かせないばかりか、かの地を代表する建築物になっています。時がたてば京都タワーも古都・京都の中で慕われる建物になり文化財的な価値が認められてくるのでしょうか。いや、すでにそうかも。

2018年7月に放映された『美の巨人たち』(テレビ東京)をご覧になった方は、京都を代表する建築物にこの京都タワーも選ばれていたことを覚えていますよね。

反面、有名になったばかりにメカゴジラと戦うゴジラの熱線ビームのまきぞえで破壊されてしまったりもする京都タワー。

ひとしきり京都を楽しんだ1日、そろそろ帰りを気にする時間になると探すのがこのタワー。帰りのバスも新幹線も京都駅から。今、どこにいて駅からどれだけ離れているか、視覚で感じることが出来るのでつい探してしまう。

好きな時間、季節とともに

私が一番好きなのは夕暮れ時。(2019.11.24 )

そして、桜の季節。

少し離れた市内、桜並木が綺麗な場所で満開の桜越しに眺めるタワー。

お奨めの場所は東本願寺前です。(2018.3.30 東本願寺前の桜並木より)

中に入ったこともなければ展望台にも上がっていない、なのに京都に訪れるたびに愛着が増していく不思議な魅力がある京都タワーです。