3,000本の桜の向こうに白銀の南アルプス・赤石岳

4月上旬の週末、南信州の大鹿村へ車を走らせた。

天気予報は土日とも絶好の好天を約束していたが、しばらく春の花をもとめての山ざんまいの日々でお疲れモードも重なり休養にあてるつもりだった。ところが、新しいオモチャ(カメラ)を手にした相方の方がうずうずして「桜を見に行こう!」と言い出し、温泉付きならば、と午後ゆっくりと出かける事になった。

大鹿村までは幸い自宅から2時間半ほどあれば行ける距離。山を歩くには遅すぎる出発時間だが、桜と山見物だけなら気楽なドライブだ。

中央高速道を松川ICで降りておよそ30分、次第に山ふところに入ってくるようになると、道路は小渋川沿いに走るようになる。その河原ではリニア新幹線用の工事関係だろうか、河原にいくつもの重機が並びう回路も出来ている。山間にトラックやダンプが頻繁に行き来していることからも、この静かな南信も大きく変わることを余儀なくされている。

小渋湖を過ぎ、大鹿村に入り桜咲く大西公園へと車を走らせる。

駐車場には大勢の地元ナンバーの車が停まっていた。ここからは大萱山をバックにした桜並木が素敵だ。

 

人口わずか1,500人の大鹿村。「大鹿桜」として

正面に高くそびえているのは鳥倉山。そう、塩見岳への最短路はこの鳥倉山を越えてのびる林道からとなる。

そして、彼方には白銀の嶺、南アルプスの盟主・赤石岳が凛としてその雄姿を見せ始めていた。朝は雲がかかっていたのだが、午後になり天気は回復し、澄んだ青空になってきて、白い稜線が見える。昨夜は春雷。新雪が積もったのかもしれない。

この景色を見るためだけにここまでやってきたが、その価値はある。

この公園には梅の花も咲いていた。正面の山の高まりは奥に見えている奥茶臼山(2,331m)へと続く。

 

大鹿村全景。奥に見える赤石岳を仰げぐ、山の旅情があふれる「日本の原風景」。

遠くに見える白銀の高嶺を見て沢を歩いてのアプローチを想像するだけで、胸が高鳴ってしまう。

夏の小渋川を渡渉して大聖寺平に出て赤石岳の山頂に到達したときの爽快さは、この長いアプローチがあってからこそだろう。何事も「安・近・短」が流行りだが、過程が味わい深ければこその充実した旅こそ、実は最大の贅沢なのではないだろうか。

 

桃源郷・大鹿村の悲劇を忘れないで

パキスタンにフンザという町がある。カラコルム山脈の奥地、ナンガパルバットやラカポシを前景にした風景は世界的にも有名なのだが、桜咲く季節のここ信州・大鹿村も白銀の赤石岳を小渋川の谷の奥に展望出来、負けてはいない絶景。

「日本のフンザ」とも呼んで差し支えない風景がここにある。

美しいこの風景を眺めた後、知った事があった。

昭和36年の豪雨でこの公園の背後にある大西山の斜面が大規模に崩落、巨大な土砂崩れが麓の集落を襲い42名の尊い命をのみこんだ悲劇のあと、慰霊のため整備されたのが実はここ大西公園。

巨大な「大西観音」が公園の後ろに建立されている。

この美しい桜は犠牲者の慰霊のために植えられてきた歴史があった。広場の慰霊碑を見た後に再び観音様へと会談を登って再び眺めた赤石岳。胸には全く違う想いが去来した。

大鹿村の悲劇… これを知ると知らずでは、この景色を見た時の気持ちが大きく違ってしまう。

遠く赤石岳を眺めるこの観音様は山がもたらした災いで尊い命が再び失われないよう、私たち人間の代わりに山にむかって祈ってくれているのかもしれません。

【リンク】長野県大鹿村観光総合サイト

http://ooshika-kanko.com/index.html

 【ヤマレコ】

https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3067590.html

【参考 2021年大西公園の桜開花状況】(例年は4月中旬が見頃)

3/30 開花

3/31 三分咲き

4/2  満開

4/5  散り始め

4/9  落花盛ん

4/12 落花盛ん(5分ほど)

4/14  散り終わり