佐渡は花の島。見頃は5月ゴールデンウィーク

このゴールデンウィークは花の島・佐渡を楽しんできました。

『佐渡が花の島だって?』

花の島といえば真っ先に浮かぶのが北海道にある礼文島だろうか。最果ての大地のさらに海の向こうに浮かぶ島にロマンを抱き想いを馳せる人は多いでしょう。

でも、佐渡が花の島って? 佐渡島が?

佐渡と聞いて頭に浮かぶ言葉は何でしょうか?

『トキ』『佐渡おけさ』『金山』… 他には?

『たらい舟』や『かつて流刑地だった』、少し詳しい人ならば『薪能』も出てくるかも。

でも、僕が声を大にして言いたいのは『佐渡の魅力の一番は花の島』だということ。

意外に知られていない、花の楽園としての佐渡

そう、佐渡は間違いなく花の楽園。

『花の ”浮島” 』の称号は礼文島同様に佐渡島にもあげたい。

西海岸にはオドリコソウが群生し、大佐渡山地の最高峰、金北山 (1,172m )まで島のいたるところで可憐な山野草を見ることが出来ます。

佐渡のオドリコソウは東関東で見られるのと同じ白い色の花。

この時期も残雪豊富な金北山。

ベストシーズンはまさにゴールデンウィーク。
ここが花好きの自分にはうれしいところ。

この季節、アルプスはまだ豊富な雪の中。本州の低山にも花はあれど、欲張って多くの花を見ようとするとなかなか一緒にタイミングが合わず何度も足を運ぶことになる。

この時期の佐渡がすごいのは春の花が集中して見ることが出来る事。しかも見事な群落なのです。

スプリングエフェメラルと呼ばれる早春の花たちが、雪解けを待って咲き誇る様を山頂の稜線で見ることが出来ます。
特にカタクリはそこかしこに大群落をつくり足の踏み場もないほど。

赤・紫・青と色とりどりで華やかなアズマイチゲ、キクザキイチゲ、そして雪割草の名で人気のオオミスミソウ。

ザゼンソウ、各種スミレ、ミヤマカタバミ、エゾエンゴサク、ヒトリシズカ、エンレイソウなどなど。
林床や湿地も花であふれかえり、夏に牛が草を食む放牧地にはアマナが。
そして、山麓から中腹にかけては数えきれないほどのニリンソウ。

これらの花に加えて、本州の山では少し遅れて咲きだす春の花たちも、佐渡ではこの時期に一緒に見ることが出来ます。
イワカガミ、サンカヨウ、そしてシラネアオイ…

ゴールデンウィークの佐渡は、この微妙に咲くタイミングが違う春の花たちがほぼ同時に咲き誇るのを、しかも短時間のアプローチで楽しめる事です。

日本全国どこに行っても混雑するこの時期ですが、なぜか佐渡で混んだ経験がありません。
新潟からフェリーで2時間30分、上越市の直江津港から高速フェリーで1時間40分。
それほど長い船旅ではないのですが、「島」というだけでやはり足が遠のくのか、本州に比較すれば驚くほど静か。
昨年同じ時期に旅した伊豆大島などに比べても圧倒的に旅行者が少ない印象です。

大きな島ですが、花を目指す場所はただひとつ。
それは大佐渡山地のドンデン山とそこに至るアオネバ渓谷。

2つの日本一。一つはカタクリの大群落。

佐渡の玄関口、両津の街からドンデン山に向かって延びる自動車道。
そう、ドンデン山には労せず車でアプローチ出来ます。

嬉しい事にここには山荘があり、宿泊可能です。
名前はズバリ、『ドンデン高原ロッジ』(旧名ドンデン山荘)。標高は887m。

そこはもう、亜高山帯を思わせる世界。展望はごらんのとおり雄大そのものです。

標高は900mほどなのですが、日本海に面した強風にさらされる『山頂効果』によりドンデン山の稜線は本州の2,000m 級の高山と同じ環境に。

特にカタクリの群落は文字通り『日本一』。

この島のカタクリの特徴は、『葉に斑(ふ)がない』こと。

こちらは本州のカタクリ(鈴鹿山系・烏帽子岳にて)。斑(ふ)があります。

本州のカタクリにあるような斑(ふ)がないので、見てもすっきりとして綺麗なのが特徴。遠目には花の赤紫と葉の緑だけで見事なグラデーションを林床に見せてくれます。

その様はさながら敷かれたカーペットのようです。

カタクリ咲く稜線のトレイルを歩く。

アマナ。

毒素をもち牛が見向きもしないため、アマナは稜線上の放牧地に大きな群生をつくっています。

ドンデン山には同じ名前のドンデン池がある。この池の周囲は花の宝庫。

見かけた樹林の下に咲くスプリングエフェメラルの花たちの写真です。

ユキワリソウ。

ミヤマカタバミ。

エゾエンゴサク。

佐渡のエンレイソウは赤い(本州の花はもっと黒っぽい)。

ザゼンソウ。

もうひとつの「日本一」、シラネアオイ咲くアオネバ渓谷

ドンデン山の魅力のもう一つはアオネバという珍しい名前の渓谷。
花の多い谷です。

特筆すべきなのは、シラネアオイ。
こちらも日本一の群落です。

日本固有種、しかも1属1種という貴重種シラネアオイ。

日光白根山や信州・戸隠&斑尾高原、北アルプス白馬岳大雪渓など本州でも見る事は出来ますが、いずれの場所も足を運ぶにはそれなりの時間がかかる山奥です。

佐渡のアオネバ渓谷は登山口の標高わずか293m、フェリーを降りた両津の港街から車を10分も走らせれば到着します。

ここから30分もかからず、日本一のシラネアオイ群落が待ち受けています。

ニリンソウ咲く登山口。

「イワカガミのトンネル」を抜けて。

日当たりのよい場所にはハルリンドウ。

気持ちのよい平地の樹林帯もあります。

ヒトリシズカ。

水の流れに沿ってニリンソウは絶え間なく続く。

ミヤマキケマン。

キクザキイチゲ。

アズマイチゲ。

そしていよいよシラネアオイがお目見え。

とにかく可憐。

意外と大きな花でしょ?

ところで、なぜここまで花が見事なのでしょうね。

礼文島と同じく、クマ、サル、シカ、イノシシといった哺乳類が島内にいないため、本州の山々で問題となっているこれらの動物たちによる「食害」が佐渡では貴重な花々に及んでいないためなのです。

島を訪れるビジターにとっても、危険な動物との接触がなく安心して山を歩けるのはうれしい。

アオネバ登山口からドンデン高原ロッジまでゆっくり歩いて2時間ほど。花を楽しみながらゆっくりと1日かけてドンデン高原まで歩くのがオススメです。

もう少し詳しい登山道の状況や、佐渡の別の魅力である歴史探訪、グルメなどは別記事にて書こうと思います。

山麓ではトキが舞う豊かな里。
この島は、人間と動植物が見事に共生する場所でした。

【関連情報】
●ドンデン高原ロッジホームページ

●佐渡へのアクセス
佐渡汽船ホームページ

写真は直江津~佐渡・小木航路の高速カーフェリー「あかね」