信州の陣馬形山に出かけました。天竜川が流れる伊那谷と屏風のような中央アルプスの展望が素晴らしい標高1,445メートルの山です。山頂まで舗装路が延びているので、労せずこの大パノラマが楽しめます。無料のキャップ場まであり、テントを持参すれば星降る夜に眼下の夜景を見ながらロマンティックな1夜を過ごす事も出来る山は、信州広しと言えど、他にはないのでしょうか。
山頂の案内板によると、この陣馬形山には古く戦国時代には甲斐の武田信玄の「ノロシバ」があったそうです。確かにこれ程までに眺めが良ければ敵の動きもすぐ分かり、麓や他の周りの山々を伝え渡る煙を使った「狼煙(ノロシ)』場として理想的です。
しばし戦国時代に頭と気持ちがタイムスリップしたその時、ふと思ったのは『群雄割拠の戦いの時代にインターネットがあったなら?』という事でした。こんな事、あまりに突拍子もない空想で、誰も思わないでしょ? 『ありえなーい!』と言われそう… 。でもなぜかその時、ケニーの頭の中にはスマホに向かって唾を飛ばす陣馬形山頂の武田信玄の甲冑姿が浮かんでいました! そして眼下の伊那谷には北に向かって進軍する軍勢が!
あれは織田か、はたまた徳川か? どうする信玄!?
『誰ぞある! 彼らは何処に向かっている?』
『はっ、御館さま。ただ今グーグルマップで調べておりますれば…。どうやら松本方面へ向かって徒歩で10時間というところであります』
『ツィートは調べておるのか?』
『飛び交っておりまする。中には上杉が我らに味方すべく今までの因縁を水に流して軍をすでに出陣させたと…』
『たわけ者がっ! 恐らくそれはフェイクニュースだ』(何で信玄、名古屋弁?)
『殿っ! インスタに、の、信長がっ。Vサインで行軍の先頭におりまするぞっ』
『急ぐのじゃ。伊達や毛利とはフェイスブックでつながっておる。すぐリンクして知らせよっ!援軍を頼むのじゃっ。任せたぞ、しかと心得たか?』
『と、殿は…いかがされますので…』
『わ、ワシは取り急ぎこの緊迫した状況を忘れないよう、ブログを急ぎ更新せねばっ!』
『と、殿ォ〜っ!?』
『いつまでいるのー! もう帰るよー!』
はっ、何だったの、今の空想は? 目の前には変わらず悠揚としたアルプスの山並み。箱庭のような伊那谷の眺め。戦国武者なぞ、どこにもいない。せっかく、インターネットに囲まれた日常から離れようとここまで来たのに…。ともすると、すぐに頭の中まで入ってくるインターネット環境。便利だけど、戦国の世には不要だったかな。歴史のロマン溢れる世界には、役者たちの間には「ほどほどの」距離感があっている。誰ともつながる便利な環境がいつもいいとは限らないよなぁ。鎧を着て刀を腰に差した武将が戦場でこそこそスマホ見てるのが、駅前に立っている郷土の英雄の銅像になってるなんて絵にならないよね。
こんな素晴らしい展望の山の上でスマホをチラチラ見ている人の多い事。これも絵にならないなぁ。
みんな、見るところが違ってるって!
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『陣馬形山、紅葉・天高く空青し』