もうすぐハロウィン。「今年はどんな格好をしようかな」とワクワクしながら考えている若い方も多いと思います。
ご存知のようにハロウィンは日本のお盆のように年に1度、あの世から御先祖様の霊やらあちらの神様やらが、この世にやって来る日です。その前夜に仮装衣装でお祭り気分となって大騒ぎするのが近年の傾向。日本でのハロウィン関連の市場は近くバレンタインデーのそれを上回りそうらしい。
さて、今日ご紹介する「パーントゥ」は、そのハロウィンのご当地版の一つ。日本版ハロウィンに近いもので特に知られているのは秋田県のナマハゲ。あの世からの「来訪神」は御先祖様と同一視され、崇められてはいますが、どれも子供が泣き出すような恐ろしく奇怪な顔をして近寄りがたい。そして御利益を振りまくのにこれまた尋常でない振る舞いをします。
パーントゥは、ナマハゲ以上におどろおどろしく、全身から異臭を放つ泥に覆われた来訪神です。沖縄・宮古島の平良島尻と上野野原の2地区で行われる奇祭。パーントゥと呼ばれる来訪神3人が奇妙な仮面をかぶり、誰彼構わずに泥を塗りたくる。人だけでなく、クルマや、時には家の上に上がり込んで泥まみれにしてしまうのです。新築の家なども狙い打ちです。子供や赤ん坊にも泣こうが泥を塗りたくります。ナマハゲは驚かすだけで、そこまでしませんよね。
ですから、このパーントゥ、普通のハロウィンのように好き勝手な衣装を来て浮かれ騒いでいるだけで参加している気分にはなれません。ナマハゲのように後ろをついて行って見学するだけというわけにもいかないのです。参加するにはそれなりの覚悟が要ります。
パーントゥの御利益を貰いたければ、勿論パーントゥたちに近づかなければいけません。が、その臭い事、臭い事。半端なく臭いっ!全身にはシイノキカズラというツル草を巻きつけ、その上に「ンマリガー」という井戸の底に溜まった泥を存分に塗りたくっているからです。一度臭いが服に着いたら数日は取れない程です。が、パーントゥたちはわざわざその泥を塗りたくるために近寄る人たちに襲いかかって来る(笑)。時にはガバと抱きつかれる。顔にも遠慮なく塗ってくる。カメラを持っていようが関係ない。泥でベタベタになるのがイヤではパーントゥには近寄れません!
この泥こそが、神様からの祝福、大変な御利益があるのです。パーントゥは皆を幸せにるためにわざわざ泥を塗りまくります。わざわざ新車に塗って欲しいと通りかかるパーントゥにお願いする地元の方もいます。
パーントゥのお祭りに参加したければ、泥まみれになる覚悟が必要です。
それを知らずに偶然通りかかった観光客がパーントゥに泥をつけられて、逆に殴りかかったり、背景を知らない女性観光客が、「抱きつかれた」と苦情を出したりと予期しないトラブルが近年起きたため、現在、宮古島ではあえて祭りの実施日を公開していません。観光課へ問い合わせた人のみに伝えているようです。
パーントゥは日本の他の来訪神の祭りと共にユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。
和食、和紙に続いての世界無形文化遺産登録で、『来訪神 仮面・仮装の神々』として8県10件の伝統行事の一つとしてつい先日の10月24日に登録勧告されたばかり。正式登録される来月には大々的にニュースになるはず。
ハロウィンにはしゃいでいるのは主に10代の若い人たち。年齢が上がるにつれてむしろ「騒々しい」と思う方が増え、終わった後のゴミの散乱を見て顔をしかめ、「ハロウィンなんて、何が楽しいんだっ ! 」と思う人も実はかなりの数です。そんな都会では騒々しいハロウィンの時期と同じく、実はパーントゥは10月最期の週末に行われるらしいです。
ハロウィンというならばいっそ、白けそうな街中から脱出、宮古島に飛んでパーントゥに参加して思いっきり泥まみれになってみては? ゴミも出さず、汚れるだけ、しかも本当の御利益付!
『大人の遠足』の目的地には絶好です。ま、間に合う方、いるかな〜? (遅すぎますよね…)ただいま病気療養中の私にはチト無理なので、狙うのは来年っ! 世界遺産登録で人が増えて混むのかな?
(写真は以前行った宮古島の居酒屋に飾ってあったパーントゥのお面 : オヤ、コ、ナカ 。キリスト教の神、子、精霊に似た役割があるそうです)
★2018/10/27はてなブログ投稿記事を移動・再編集しました。