小さな習慣 … 本が問うのは「目標は自分の中で育っているか?」

小さな習慣』(ダイヤモンド社)スティーヴン・ガイズ著

まず、本の名前がいいじゃないですか。『小さな習慣』って。シンプルでかつ押売りの飾り言葉もなく(例えば、『〇〇が叶う、△△の習慣』とか)、手に取りやすい本。でも読みだすと意外にも文字も多く内容もたっぷり。しかも前半は、科学的検証をこれでもかと重ねて著者が気づいた仮説を裏付けているので、いちいち納得してしまいました。特に人の行動の半分近くが意識外の「習慣」によるという事実はかなりショックでした。

今迄、何かを始めようとか、改善しようとする際には新しく「やる事」に意識が行き過ぎて、すでに身についている悪しき「習慣」とまずは戦わなければいけないという作者の発見には戸惑いさえ覚えました。しかし、この本はそれに対しても非常に明確に道筋を示してくれています。

★頑張りすぎない。

★意識せずに習慣化していく。

★小さいが故に感じる進歩も日々小さい。その程々さが大事。

★しかし、習慣が身についてきた、と意識するタイミングは大事。その時の心の変化に気づけば習慣は本物だ。

習慣化そのものが大事ではあるけれども、それ以上にそれを意識する事から自由になれる!これがこの本の内容を実践できたら得られる最高のもの。これは大きいです。なにせ嫌な事に貴重な時間というものを奪われる感覚が無いという事ですから。しかも気持ちのハードルをいちいち意識する事も無い。

大いなる『自由』を得て目標実現に邁進出来るのは本当に素晴らしいっ!

でもね… それでもこの本は、自分の中の具体的に『こうしたい』という、個人ごとにベクトルが違っている目的・目標の設定については教えてくれてはいない。

それ(目標)に向かってやる事が明確になっていて初めて、それを達成出来るヒントをかなり明確に与えてはくれます。

ですが、どのような目標であれ、それをあまり意識していない人は途中で読むのを終えて投げ出してしまう本かもしれません。
目標とは、「ああしたい」「かくありたい」という個人の心の中の願望、言葉を変えれば欲望、煩悩の具体化だと思います、それ(目標)の設定そのものについては本は何も語ってはいないのです。

欲の無い人に無理に願望を作り出す必要は無いとは思います。逆に欲望が強すぎる人はこの本を手に取るまでもなくゴール向かっての行動の最中かも知れません。では… それ以外の、中途半端な欲望・願望のある、大多数を占める人たちには?この本とは別に目標そのものをどう設定すべきか、別の本『小さな目標』(?)が必要だとも思いました。

そこまで思ってからですが …。いや、なんか違うなぁ。目標って無理に大きくするものでも無いし、大きければ幸せだとも思わない。ですから、心の中に芽生えた「小さな動機」がその人の中に育つのは自然に任せた方が本当は良いのかもしれませんね。目標が出来るのは、常に動機付けの後ですから…。

この本の価値は手に取るタイミングがその人の動機と目標の育ち具合次第だと思います。読んでいる途中で投げ出しそうな気持ちになるなら、まだ早いのかも。逆に目標も動機もしっかりとして来ている実感がある人にとっては手にとるのにはよい時期。目標実現の大きなヒントになる本です。

★2018/11/2 はてなブログ投稿記事を移動・再編集しました。