インフルエンザ予防 正しい咳・鼻エチケット ドイツ人は子供の頃、みんな教わった事でした

インフルエンザ大流行の冬。

いつになくインフルエンザが大流行しているこの冬。

過去にない大流行の兆しが見え、収束する気配もまだない。

季節は移り、スギ花粉の飛散が始まるのも目と鼻の先に迫ってきた。

インフルエンザに一旦かかると、一時的に免疫力が低下して花粉アレルギーもひどくなる。

街の中でもマスクをして予防につとめている人の多い事。

以前から、ドイツの同僚たちは食事の最中にも平気で鼻をかんでいた。

それも半端なく豪快に。

相当大きなティッシュをポケットから取り出すと鼻にあてて、

「フーン!」

「ブブブッ! ブブゥ!!」

と驚くような音量で思いっきりに鼻をかむ。

こちらはビックリしているのに、本人はけろっとして悪びれる様子もない。

周りの他の同僚たちも、特に気にする様子もない。

急に出てくるクシャミには、顔を食卓からそむけて、着ている服の袖あたりを鼻と口に押し当てて急場をしのいでいるようだった。

「オイオイ、鼻水、服につくよっ。

風邪でもひいていたら、テーブルについてしまうんじゃないか?」

打合せの後のビジネスディナーで、バッチリとスーツを着ているものだから余計に気になってしまう。

長年、このような光景をよく見かけるものだから、欧米人は食事中には意外に「音」には寛容なのだ、程度に思っていた。

つつましく、しめやかというくらい静かに食事をするのが代々の日本での食事。

欧米では家庭でも家の外でも相互のコミュニケーション、つまり会話が重んじられる雰囲気の中で大きな音をだてて鼻をかむという行為も「みっともない」という目では見られないものなのだなあ、と感じていた。

だが、それは大間違いで、この行為には人に配慮する別の意味があった。

マナー違反?それは大きな間違い。

それが分かったのはつい最近。

日本の社内にもドイツで生まれ育った同僚が採用され、一緒に仕事を始めたからだ。

仕事もよく出来、気さく。だが、時と場合をわきまえた、必要な際にはきちんとした身なりで参加する。

そんな彼も、宴席で同じように大きな音を立てて、全力で

「フン、フン、フーン !」

と鼻をかんだのだ。

一瞬ではあっても周りに座った得意先や同僚も気が付いて彼の方をみやった。

が、彼はニコニコして、軽く会釈しただけで隣のゲストとの話にすぐ戻ってしまった。

食事がひけて、僕は帰ろうとしている彼を止めて聞いてみた。

むろん、詰問するつもりもなく、ただ、感覚の違いというものがあれば、一応、日本人の受け止め方を話しておいた方がいいのか、と思ったのだ。

『食事中、いきなり大きな音で鼻をかんだものだから、ちょっと驚いたよ。風邪気味なのかい?』

「ああ、すいませんね。ハイ、ちょっと風邪なのかな、あまり食欲もなかったのですよ」

『お客様もビックリしてたようだったから… 』

「ああ、すいません。日本では失礼なんですよね、ちょっと」

『ん…、まあ、そう感じる人もいるよね』

「でも、ドイツではこれが一番マナーがいい、と思うね」

『前に出張に行ったドイツで食事の際に、急にくしゃみをした人がいてね。

その人は手で鼻や口をおさえないで、袖で顔を覆ったんだよ。びっくりしてね、服がよごれるし、あわてていたんだろうね…』

「え、ケニーさん。 彼は正しいよ。一番正しい対応ですね、それは」

大きな音で鼻をかみ、くしゃみを抑えるのには手でなく服を使うなんて、どこが正しい対応なのか?

こりゃ、日本のマナーを教えておかないといけないな、と思って話を続けようとすると、彼がもっともな理由を説明し出した。

『鼻がつまったりして、咳やくしゃみをしてしまうと、インフルエンザとか風邪の菌がまわりに飛びますね。

これはよくないです。だから、大きな音がしても、ちゃんと鼻をかんで鼻水を出してしまわないといけないです。

トイレに行って鼻かむのはね。

ドアのノブが汚いからあまり良くないです。そこからバイキンうつります。

あと、服を使ってくしゃみをとめるのは、大丈夫です。

だって、手でくしゃみをとめると、菌が全部手につくでしょ? そのあとその手でテーブルをさわったり、パンのバケットにさわったりしますね。

そうすると、みんな風邪ひいてしまいますね。

服はよごれても、ハンカチでふけば大丈夫。 大事なのは風邪をほかの人にうつさないこと、でしょ、ケニーさん?』

ううう… 納得。完璧に納得してしまう。

聞けば、この教えは子供の頃、学校や家庭で教わったものだという。

後日別のドイツにいる同僚と電話で話をした際にも同じことを言っていた。また、USAの知人も同じような事を言っている。

間違いない。これは欧米では常識なのだ。

では日本はどうなのか、とウェブで調べてみた。

すると次のようなツイートを見つけた。

アメリカ在住の日本人ドクター、梶祐貴さんが厚生労働省がアニメ漫画の「進撃の巨人」とコラボして2年前に話題になったポスターを評価したもので、かなり巷で話題になっているようだ。

ドイツ人の同僚にこれを見せたら、

「ほらね」

としてやったりの顔。

一本取られたなぁ。

皆さまも、インフルエンザにはご注意を。予防とマナーは一体ですね。